<高校野球南北海道大会:苫小牧中央10-3浦河>◇28日◇室蘭地区代表決定戦

 室蘭地区は代表決定戦2試合が行われ、苫小牧中央が浦河を10-3の7回コールドで下し、3季通じて初の道大会進出を勝ち取った。26日の室蘭栄戦で完全試合を達成した佐藤賢太投手(2年)がこの日も先発、初回に2失点するも試合をつくった。2年生エースの奮起に3年生らが打撃で援護、チームが1つになり就任18年目の渡辺宏禎(ひろよし)監督(39)に恩返しの代表切符をプレゼントした。

 校歌を歌い終えた苫小牧中央ナインは、全校応援の待つ三塁側スタンドへ全力で駆けだした。誰もが満面の笑みで、声にならない声を上げていた。3季を通じて初となる、うれしい代表切符。だが、その道のりは決して簡単なものではなかった。「代表決定戦で7回か8回負け続けました」。渡辺監督の目が心なしか潤んでいるようだった。

 チームに勢いをつけたのが、2回戦の室蘭栄戦で佐藤賢が成し遂げた完全試合だった。全国でも10年ぶりという難記録を、2年生エースが淡々と達成した。だが本来なら代表決定戦で出てほしかった記録。1試合前に大騒ぎされたことで、不安も出た。全国から電話で取材攻勢を受けた渡辺監督は「僕自身が変にならないようにと言い聞かせた。佐藤にも『ここが目標じゃないぞ』とクギを刺した」という。

 だが周囲の喧噪(けんそう)にも大物2年生は動じない。気負いもなかった。主将の島田祐一一塁手(3年)の「お前のいつもの投球をすればいい。あとはオレらバックに任せろ」の言葉通り、打たせて取る投球で試合をつくった。前の試合の疲れもあり、初回に3長短打で早々と2失点したが「あれで気が楽になったかも」と振り返る余裕があった。

 私立だが、これまで地区を突破していなかっただけに、好選手はなかなか集まらなかった。渡辺監督の母校、駒大岩見沢とは大違い。6年前にはわずか部員3人という時代も経験した。それでも監督の人柄を知る人々が徐々に増え、力のある選手も入ってくるようになった。現在「スポーツクラス」と呼ばれる3年A組は、担任の渡辺監督以下、野球部がズラリ。“渡辺組”の総力で勝ち取った勝利だった。

 全道での抱負を「今まで室蘭地区のいろいろなチームに助けられやってきた。ここの代表として恥ずかしくない試合をしたい」という指揮官。激戦区・室蘭地区にまた1つ、強豪校が誕生した。【本郷昌幸】