<高校野球南北海道大会:とわの森三愛9-8大麻>◇30日◇札幌地区G地区代表決定戦

 とわの森三愛が8点差をひっくり返して大麻に9-8で逆転サヨナラ勝ちし、3季通じて初の道大会進出を決めた。4回まで0-8のコールド負け目前から反撃、立ち直った3連投のエース柴田隼斗(3年)が後半をピシャリ。31年間チームを率いてこの夏限りで勇退する伊藤敦司監督(55)に、最後のプレゼントを贈った。江別は札幌啓成を4-0で下し47年ぶりの代表切符をつかんだ。これで南北全32代表が出そろった。

 高校野球のドラマを、とわの森ナインが見せてくれた。4回まで0-8の一方的展開をあきらめず、5回から反撃に移り9回裏の逆転サヨナラ勝ちに結びつけた。「まだ野球ができるぞ~!!」の声が勝利後のベンチに響き、誰もが涙を抑え切れなかった。91年の創部以来初の道大会出場に、選手も全校応援のスタンドもいつまでも酔った。

 1点を追う9回裏。無死から連続死球でつかんだ好機も、後続が相次いで倒れ2死。だが、ここからしぶとかった。福沢健吾三塁手(3年)は三塁へのゴロ。直後にスタンドの悲鳴が歓声に変わる。三塁手が打球をそらした。同点。そして木村龍太遊撃手(同)が中前にはじき返し、サヨナラの走者を迎え入れた。

 エース柴田は全3試合を1人で投げ抜いた。5月の連休中に2番手投手で4番の中ノ目慎治(3年)が右手を骨折した。練習試合で酷使した柴田の左手は、2回戦の千歳戦で人さし指のマメがつぶれた。この日は3回に指がけいれんを起こした。「肩の張りがヤバイっす。めっちゃ、つらかったです」。それでも自分しかいない、と気力を振りしぼった。

 だが幸運もあった。抽選で61校中の61番のクジを引き、試合は最も遅い出場となった。大会5日前に右手からピンを抜く手術をした中ノ目の、外野手での出場が何とか間に合った。「故障上がりでも4番がいるのといないのとでは大違いだった」(伊藤監督)。

 スポーツ強豪校として有名な私学だが、野球部だけはカヤの外だった。夏も代表決定戦進出が過去2度あっただけ。前身の酪農学園大時代から通算31年目になる伊藤監督は、この夏限りで若い部長に監督の座を譲る。前身校では公式戦30連敗以上の“真冬”も味わったが「最後に大きなプレゼントをもらった」と長かった31年を振り返る。南北海道大会には「(いつもの)役員でなく、監督で行けるのがうれしいですね」と会心の笑みを見せた。【本郷昌幸】