<高校野球福岡大会:九産大九州4-3三池工>◇5日◇1回戦

 劇的な福岡ヤフードーム本塁打で、福岡の夏が開幕した。開会式後の2試合目、2点を追う九産大九州9回裏2死一塁で4番の桐明真路(きりあけ・しんじ=3年)が、左翼スタンドに逆転サヨナラ2ランをたたき込んだ。推定飛距離135メートルの今大会1号は、高校生としては98年の三潴・古賀亮次(3年=当時)以来10年ぶり2人目。シード三池工を土壇場で破り、01年以来7年ぶり甲子園へ急発進した。

 初戦敗退まで「あと1人」から、主将の3番野口大樹(3年)が左前に落ちるポテンヒットで出塁。この時、桐明の手には予感よりも確信に近い感触が、あった。「強振すれば、何とかなる」。1回裏1死満塁で迎えた、今夏の初打席。左翼フェンス直撃の先制二塁打を放っていた。高さ5・84メートルのラバーを越えるまで、残り数十センチ。「いつもだったら(スタンドに)入っている。今日はスライダーが、うまく打てると思った」(桐明)。投手は代わっていたが、決勝弾も、カウント0-1からのスライダー。高校初のサヨナラ弾は、飛距離145メートルの表示があるスタンド中段より少し下に突き刺さる、文句なしの当たりだった。本塁上で仲間に、もみくちゃにされた桐明は「こんな広い球場で出るなんて。今までで一番気持ちいいホームランだった」と、笑いと汗が止まらなかった。

 「もう負けたかと思った。20年くらい監督やってるけど、こんなことは初めて」と、森崎哲哉監督(49)も驚いた。今年に入り、桐明に打撃フォーム改造をすすめた。「お前は体重も力もあるんだから、テークバックを深くせずに打ってみろ」。新しいスイングに挑戦するかたわら「プラスワン」も続けた。「もう少し体をでかくしたくて、ご飯を丼1杯半から2杯半に増やした」(桐明)。週2回の筋力トレも怠らず、80キロから85キロにサイズアップ。2年まで5本だった本塁打も、通算10本台後半にペースアップした。主砲ゆえ、なかなか勝負してもらえないのが悩みだが「良いスタートが切れたので、もっともっと打って、勝っていきたい」。大きな1発で得た自信で、7年ぶりの甲子園まで快進撃を誓った。【佐藤千晶】