<高校野球南北海道大会:苫小牧中央10-9とわの森三愛>◇13日◇1回戦

 初出場同士の壮絶な先陣争いを、苫小牧中央が制した。道大会初勝利を狙うとわの森三愛との1回戦は、「完全試合男」佐藤賢太(2年)が打たれ4点差を逆転されたが、粘って延長に突入。延長11回裏、4番坂田篤史三塁手(3年)の右翼線二塁打で10-9とサヨナラ勝ちした。

 両軍の絶対に勝ちたい思いがぶつかり合った2時間34分。最後に笑ったのは苫小牧中央だった。9-9で迎えた延長11回裏。二塁打の明石を二塁上に置き、4番坂田の打球が右翼を襲った。「落ちろ、落ちろ、落ちろ!」。心の祈りが通じ、打球は右翼手の追撃を振り切ってフェンス際へ。創部31年目、劇的なサヨナラで3季通じて初の道大会初勝利をもぎ取った。

 難産の1勝だった。守りからリズムをつくるのがチームカラーのチームが、南北北海道大会のワーストタイとなる8失策。地区の室蘭栄戦で完全試合を演じたエース佐藤賢も、とわの森の強打線に大量リードを守り切れない。7回に7安打の集中砲火を浴び6失点。逆に2点のリードを許した。

 だが硬さは相手も同じ。その裏、敵失に乗じて1点差に迫ると、8回にはけがで地区予選を棒に振った寺崎が右前に執念の安打を落とし同点。6月15日に右手首を骨折してからずっと雑用をこなしてきた「秋からの主将候補」(渡辺宏禎監督=39)が、試合を振り出しに戻した。

 7回途中でKO降板した佐藤賢は「やはり円山は雰囲気が違うし、相手も強かった。マウンドを降りた時は悔しくて」と晴れ舞台で浴びた洗礼に沈みがちだった。それでも「(2番手の)広川もいい投手。代わりに抑えてくれると」信じて同じ2年生にマウンドを譲った。島田主将も「みんながチームのことを考えている。誰かがエラーしたらそいつの分も取り戻してやる、というチーム」と一致団結を強調した。

 サヨナラ二塁打を放った坂田は「次はこんなこと(8失策)はありません。必ず中央らしい試合をやります」と断言した。苦難を経験することで苫小牧中央はまた成長する。【本郷昌幸】