<高校野球静岡大会>◇21日◇3回戦

 「背番号15」が波乱を起こした。富士宮北・佐野準哉投手(2年)が、昨秋の覇者・静岡商を破り今大会の台風の目として注目された興誠を5-0で完封した。公式戦初先発で134球を投げ抜き、3年ぶりの4回戦進出へと導いた。また、市沼津が第4シードの日大三島を、9回に7点を奪って9-2で突き放すなど、公立の伏兵が私立の強豪を破り16強入りを決めた。

 球威以上に気迫が衰えることはなかった。まっさらなマウンドに立った佐野準が、134球の力投で興誠を4安打に抑え、最後は自身の雄たけびで締めくくった。初回から安定した投球を披露。7回には、無死満塁のピンチを迎えたが、最速142キロの直球を決め球に、併殺で興誠打線を封じ込め乗り切った。佐野準は「みんなが守ってくれたおかげで、平常心でやれた」と仲間への感謝の気持ちを口にした。

 背番号は15番、投手陣の中では植松康人(2年)に次ぐ2番手の佐野準が、この日の先発を言い渡されたのは、この日の朝だった。7回から登板した2回戦で3イニングを無失点に抑え、矢部和彦監督(54)の信頼をものにした。「今日がお前の先発デビューだけどのびのびやりなさい」と送り出した指揮官の期待に応えた。佐野準は「先発だとは思わなかった。緊張したけどやるしかありませんでしたから」。エース級の活躍に自信も勝ち取った。

 「勝ちたいという気持ちをとにかく前面に出した」と、先走る気持ちを恵まれた強い体が、大きく支えている。スタンドで応援した母由理さん(48)は「小学2年で野球を始めてから、けがというけがはない。病院にも1度も連れて行ったことがない」という。遠投95メートルの強肩で「体力はないけど、肩のスタミナには自信がある」と、最後まで直球勝負にこだわった。

 次戦はシード校を破り勢いに乗る市沼津。佐野準は「次はエースが頑張ってくれると思う」と言いながら、疲れ知らずの右腕はまだまだ投げたそうだった。【栗田成芳】