<高校野球熊本大会>◇26日◇決勝

 熊本は、九州学院が八代東を7-3で下し、10年ぶり7度目の甲子園を決めた。

 夏空に九州学院の坂井宏安監督(53)の体が舞った。10年ぶりの甲子園出場。指揮官もあふれる思いを抑えられなかったのだろう。歓喜に沸くスタンドに向かって何度も拳を突き上げた。「ガッツポーズなんてしたことなかったけど」と坂井監督は笑った。

 3年前に決勝で敗れた相手をバットで打ち破った。三塁打3本を含む12安打で7得点。序盤からペースをつかんだ。投げてはエース渡辺政孝(3年)が3試合連続完投。「疲れはあったけど、粘り強く投げました」。最高気温34度の炎天下で黙々と111球を投げた。決勝までの6試合で5完投。47イニングを投げたエースは昨秋、九州大会で敗退して「夏はお前1本だぞ」と坂井監督に言われた。冬は20キロの丸太を抱えてまた割りをするなど夏を投げ抜くトレーニングに励んだ。渡辺は「妥協しなかったのがよかった」と苦しい冬を思い起こした。

 金メダルがナインの胸で輝いた。最後に甲子園に出場した00年以後、4度目の決勝進出で壁を突き破った。昨年も涙を流しながら熊本工の胴上げを見た。あと1歩で届かなかった過去の経験から学んだことは多い。今年は練習を短めにして「昼寝も練習のうち」と休養を重視。さらに「リベンジ」の意識を持たないことなど臨戦態勢にも工夫を凝らした。

 10年ぶりの夏の甲子園。「そんなたった気がしない。若くなったのかな」と坂井監督は笑った。10年分の思いを込めて甲子園に立った九州学院ナインが、熊本の夏をさらに熱くする。【前田泰子】