「マー君2世」を目指せ。第92回全国高校野球選手権(甲子園)の福島代表・聖光学院は9日、初戦(12日)の広陵戦へ向け兵庫・西宮市内で2時間の練習を行った。地元・尼崎市出身のエース歳内(さいうち)宏明(2年)は、小園中時代に所属した「宝塚ボーイズ」の監督・奥村幸治さん(38)が見守る中、約80球を投げ込んだ。

 同チームにはかつて、楽天の田中将大投手(21)が在籍していた。両者を指導した奥村さんは2人を比較して「中学の時点では直球も変化球もちょっとだけ田中の方が上かな。でも彼(歳内)はまだまだ伸びる。『マー君超え』を狙って欲しい」と期待を寄せる。この日、歳内が当時は習得していなかった魔球「SFF(スプリット・フィンガード・ファストボール)」を目の当たりにし「すごい。低めに決まれば、打てないですよ」と絶賛した。

 練習後、恩師と顔を合わせた歳内は、照れ笑いを浮かべながら会釈した。今年の正月に兵庫へ帰省したとき以来の再会。最初に頭に浮かんだのは練習の風景だった。「ノックで気合のないプレーでミスしたら、めちゃくちゃ怒られた。…(怒られたのは)毎日だったかな」。苦い思い出話をするエースの顔は、珍しくにこやかだった。

 故郷に錦を飾るため、優勝候補の広陵には負けられない。奥村さんから「相手は強いけど、連打されても慌てんなよ」と助言を受けた。試合当日は「宝塚ボーイズ」の選手約90人も観戦予定だ。「ワクワクと緊張感を持って投げる」。後輩の応援を背に、偉大な先輩の後を追う。【湯浅知彦】