<全国高校野球選手権:聖光学院5-2履正社>◇16日◇3回戦

 聖光学院(福島)が、斎藤智也監督(47)の次男英哉内野手(3年)の決勝2点本塁打で、2年ぶりに8強進出した。エース歳内宏明投手(3年)は2試合連続完投で、5回には戦後夏通算1200号となるソロも放ち、強豪履正社(大阪)を破った。

 孝行息子が試合を決めた。2-2の8回2死一塁、斎藤は真ん中に来たカーブを右翼ポール際に運んだ。先頭の山口が右前打で出塁しながら、2度の送りバント失敗で2死。その直後に嫌な流れを断ち切る価値ある1発だった。「(主戦の)歳内を助けることができてよかった」と喜ぶ6番打者の息子を、ベンチでグータッチで出迎えた斎藤監督は「バントの失敗を帳消しにしてくれた。息子としても一部員としてもうれしいね」と、笑みを浮かべた。

 斎藤は、父に本塁打をプレゼントしたいと思っていた。本塁打を放った6月の東北大会準決勝。試合直後に手渡されるのが通例だったボールが届かなかった。忘れかけていた数日後、自宅で「ほいっ」と投げ渡された。実は斎藤監督が預かっていた。手にしたボールは家族の宝。自室ではなく、居間に飾っている。

 グラウンドでは厳しい監督だ。ノックで消極的なミスをすると「よわかす野郎!」とヤジが飛ぶ。昨夏、甲子園に出場した兄寛生(仙台大1年)にもそうだったが、ほかの部員以上にキツイ言葉をかけられる。だが、自宅で、息子の活躍を報じる新聞記事をこっそりとスクラップしているのを知った。斎藤は「部屋できれいに整頓しているのが見えました」と、少しうれしそうだった。

 「監督には1度も贈り物をしたことがない。甲子園が終わって引退したら何かあげたい。何にしようか」。試合直前にそう話していた斎藤は、その2時間後、大舞台で特大の本塁打を贈った。初戦でセンバツ4強の広陵を破り、強豪の履正社も撃破して2年前の最高成績8強に並んだが、斎藤監督は「まだ通過点」と手綱を緩めない。斎藤も「全国制覇が最高の形での親孝行」だと分かっている。【湯浅知彦】