西武秋山翔吾外野手(30)は、三塁へ走りながら打球の行方を見ていた。4-2の5回、先頭で二塁打を放ち、続く源田が左翼へフライを放った場面。「フェンス際まで届くならハーフウエーで待つけど、そこまでは行かない。(DeNA筒香に)捕られる」。当然、帰塁した。同時に、別の思惑を持った。「タッチアップ、狙える」。

 二塁に戻り、筒香が捕球するやいなや再び三塁へ向かって走りだした。筒香もすぐに送球したが、滑り込んでセーフ。1死三塁とし、次打者・浅村の時の相手暴投で5点目を踏んだ。

 三塁から一番距離がある右飛で、二塁から三塁へのタッチアップは普通。それを、三塁に最も近い左飛で成功させた。決してギャンブルではない。「筒香が(打球に)刺される体勢で追っていた」。筒香から見て、定位置から右後方(左翼ポール方向)への当たりだった。斜め後ろに走りながら捕球すると、即座に判断した。

 その判断を補強したものがある。気まぐれな梅雨時の風だ。「僕は外野手。守りながら、打球が伸びる方向に風が吹いているのは分かっていました」。文字通りの“追い風”があったから、筒香の捕球がさらに刺され、三塁送球に時間がかかると見抜いた。

 直前の4回に2点差に追い上げられており、流れを呼び戻す1点だった。辻監督は「好走塁。非常に大きな1点。ああいう取り方が普通にできれば。なかなか、打つだけじゃ難しい」とたたえた。秋山は「1死だったら行ってません。無死だったので、1死三塁になれば浅村も打ちやすいだろうと。いろんなところでスキを見て走るよう、監督、コーチにも言われています」と胸を張った。洞察に基づき、先を狙う。打つだけじゃない強さを発揮し、交流戦3カード連続勝ち越しを決めた。【古川真弥】