返り討ちの準備は整えた。10年ぶりの優勝を狙う西武にとって勝負の9連戦初戦。先発の菊池雄星投手(27)が楽天打線を8回2安打1失点に抑え、12勝目を挙げた。試合がなかった2位ソフトバンクとのゲーム差を3・5に広げ、15日から本拠地に迎えての3連戦に臨む。3連勝なら優勝マジックがつく可能性がある大一番を前に、チームに勢いをつける快投を見せた。

菊池は全く危なげなく役目を遂げた。8回97球、2安打1失点。7回先頭への内野安打と自らの暴投が絡み、犠飛で1点を失っただけ。「良かったと思います。バランス良く投げられました。コントロールも良かった。銀さん(炭谷)のプランどおりに投げられたと思う」。秋の匂いが漂い始めた本拠地の夜空のように、クールに振り返った。

内心はクールじゃなかった。猛追するソフトバンクが3ゲーム差まで迫り迎えた9連戦初戦。「必ず初戦を取る」と燃えていた。直接対決を重視し、中7日で15日のソフトバンク3連戦初戦に回る案もあった。辻監督は「(15日で)千賀と当てることも考えた。でも、本調子じゃない。どの試合も大事ということ」と説明。ここ2試合、序盤に左脇腹をつったコンディションも配慮した。

菊池は“私”を捨てた。首脳陣から登板日を伝えられると「ソフトバンク戦で勝ちたい気持ちは、あります。でも過去のデータも見て、どっちが勝ちやすいか考えたんだと思う」。プロ入り以来未勝利のソフトバンクにやり返したい欲を抑えた。楽天戦は今季は防御率5・09と打ち込まれていたが、4月までは13連勝。目の前の一戦に集中した。

仲間の存在があった。神戸で練習日だった10日、同学年で食事会をした。山川から「もっと腕を振ってストレートを投げれば雄星が打たれるはずがない。自信を持って」と言われた。打者目線の助言に「考えすぎていた。楽になりました」。山川は初回に2ラン。1発にも感謝した。

点差も開き、8回でお役御免。次は間隔を詰め、中5日で20日ロッテ戦に回る。その次は27日のソフトバンク戦だ。現状の最短の優勝日は24日だが、27日からの3連戦がXデーになる可能性は十分ある。菊池は「(優勝は)僕は初めての経験。楽しみです」と腕をぶした。ひりひりする天下分け目の戦いが力になる。次も、その次も、雄星はやる。【古川真弥】