日本ハムのドラフト1位吉田輝星投手(18=金足農)が22日、同郷の大相撲元関脇豪風(39=尾車)の現役引退表明に、改めてプロアスリートとして誓いを立てた。秋田出身力士の幕内最多勝利記録を持つ豪風は、県民栄誉章も先んじて受章している金足農の先輩。千葉・鎌ケ谷で新人合同自主トレ中に知ると「さみしい」と惜しみ、「(自分も)秋田のためにもがんばりたいなと思う」と決意表明した。

競技は違えど、頭が下がった。吉田輝星が金足農の大先輩の引き際に、改めてプロの厳しさをかみしめた。「自分たちが久しぶりに甲子園に出る前までは、豪風さんがすごい高校の名前を言ってくれたりしていた」と母校の名を高めてくれた偉大なOBを振り返り「活躍してくれてたんでさみしい」と素直な胸の内を明かした。自身で決断し続けるのが、プロのアスリート。自ら飛び込んだ世界の厳しさに、身が引き締まる思いだった。

豪風の存在を知ったのは、金足農2年になってからだった。母校を訪れたOBに、学内で1度あいさつさせてもらった。1年後の昨夏、野球部が甲子園で活躍した際は豪風が、吉田輝星の気迫あふれる投球や、国民的な盛り上がりを見せた「金農フィーバー」を喜び、激励してくれた。

同窓の先輩である豪風とは、もう1つ別の共通点がある。秋田県の県民栄誉章だ。吉田輝星ら野球部は甲子園準優勝を評価され、昨年11月に受章した。先んじること2年。豪風もコツコツと積み上げた幕内勝利数が秋田県出身力士の最多記録を更新し、16年8月に授与されていた。

ただし、吉田輝星はチーム、団体としての評価であり、豪風のように個人ではない。秋田出身のプロ野球選手では、3冠王3度の落合博満と通算284勝の山田久志が、秀でた個人の成績を評価され、受章している。「秋田のアスリートはあまり多くはないので、少ない分、1人1人が活躍すれば『良い選手ばっかりいるな』とか思われる。秋田のためにもがんばりたいなと思う」。高校球児で1度、プロ選手で2度目を受章できれば、秋田県では史上初となる。

この日、千葉・鎌ケ谷で第4クール3日目となった新人合同自主トレを終えた。キャッチボールでは力強い球を放るなど順調な調整ぶり。「金足農」といえば「吉田輝星」と呼ばれるように、プロの階段を駆け上がる。【山崎純一】

◆秋田県民栄誉章 広く県民に敬愛され、社会に明るい希望を与えるとともに秋田県の名を高めた者に対し、その栄誉をたたえる賞。対象は秋田県在住、出身の個人、団体で学術(研究、発明、発見)スポーツ、芸術、文化等で業績が顕著なこと。87年1月29日の第1号落合博満から、昨年11月28日の金足農高野球部まで19個人、4団体が受章している。

◆金足農旋風 夏の全国高校野球で秋田代表の金足農が準優勝。エース吉田輝星ら地元中学出身者ばかりの公立校が私立強豪校を撃破する快進撃に、高校野球ファンはもとより農業関係者らも巻き込むフィーバーとなった。年末の風物詩「新語・流行語大賞では「金足農旋風」でエントリー。「カナノウ旋風」とも呼ばれた。