ソフトバンク・ドラフト1位の甲斐野央投手(22=東洋大)が、衝撃デビューを飾った。オープン戦初登板で本拠地ヤフオクドーム初登場の阪神戦。プロ入り後最速を更新する158キロをたたき出した。走者を出しながらも8回の1イニングを併殺などで3人で抑え、無失点にまとめた。

「ファンの方の歓声がすごくて力みになってしまった。スピード表示は出ていたかもしれないけど、もっとスピンの効いたいい球が投げられると思う」。試合後も紅潮させたまま、自分に厳しく振り返った。

高みを目指す右腕にとって、課題と収穫のマウンドだった。158キロをマークした先頭近本への初球。三塁側にセーフティーバントを決められた。フィールディングは得意だが、虚をつかれて一塁を奪われた。「実力不足。準備不足。反省しなければいけない」。

だが実戦力の高さも見せた。走者を背負いクイックになっても球速を落とさず、150キロ台中盤をキープ。前日に甲斐から盗塁していた近本の二盗は、捕手栗原との共同作業でアウトにした。続く鳥谷には四球を出したが、この日本塁打していた4番大山を遊撃併殺に仕留め、1回を3人斬りの無失点でしのいだ。

中継ぎ陣に故障者が相次ぎ、勝ちパターンが定まっていない。だが宮崎キャンプ中からの安定した結果で、セットアッパー候補としての開幕1軍も現実味を帯びてきた。工藤監督は「悪いときにどうするかが大事。今日は1つ自分でステップアップできた」と評価。球団のドラフト1位選手が開幕メンバー入りすれば東洋大の先輩、08年の大場翔太以来になる。福岡のファンに自慢の剛球で“自己紹介”した右腕は「まだ実力を上げて、アピールのチャンスはあると思うので。満足することなく、志を高く持っていきたい」と鼻息荒く意気込んだ。【山本大地】

◆ソフトバンク救援事情 不動の守護神だったサファテが昨季、股関節を手術。開幕に間に合うかは不透明だ。17年の最優秀中継ぎ右腕、岩崎も昨年右肘を手術。今春キャンプ中にも再検査するなど復帰めどが立っていない。昨季セットアッパーの加治屋も右肩不調で出遅れ、先発リリーフでフル回転した石川も右肘痛と右太もも肉離れで調整中だ。左腕の嘉弥真も股関節を痛めており、まだ実戦登板できていない。新人も甲斐野を含め4人がA組キャンプでアピールを続けたが、2位の杉山一樹投手(21=三菱重工広島)は練習中に右足首を捻挫して離脱。現時点で勝ちパターン入りが確実なのは昨季抑えを務めた森1人で、甲斐野への期待が高まっている。

◆甲斐野央(かいの・ひろし)1996年(平8)11月16日生まれ。兵庫県出身。東洋大姫路から東洋大を経て昨年ドラフト1位でソフトバンク入団。高校時代は三塁手だったが、大学から投手に転向。直球とフォークボールが武器。身長187センチ、体重86キロ。右投げ左打ち