東洋大完全優勝の原動力は、6勝0敗、防御率0・77のエース村上頌樹投手(3年=智弁学園)だ。16年センバツ優勝投手だが、昨年までは150キロトリオ(上茶谷、甲斐野、梅津)の陰で登板機会が限られていた。

3年春で花開いた右腕を、東洋大OBで元西武の松沼雅之氏(62)が語った。

松沼氏は「臨時コーチ」として、東洋大投手陣への指導を行っている。完全優勝をバックネット裏で見届けた。

「村上は今年、オープン戦で結果を出し、自信がつきました。高いレベルのボールを投げられるようになっています」

具体的には、直球の質とコントロールを挙げた。

「真っすぐの低めのキレとスピードが上がりましたね。コントロールも、以前はアウトか、インか、だけだったが、今は高さの投げわけもできる。変化球も加わった。つまり、上下、左右、さらに変化球でもストライクが取れる。1年春も良かったけど、今年は全てのボールがいい。打者は的が絞れない。完投する体力もついた。突き抜けましたね」

メンタルの強さもある。

「度胸がある。ポンと、スローカーブを投げられる」

能力を高く評価する松沼氏だが、女房役の佐藤都志也捕手(4年=聖光学院)の存在も指摘した。

「佐藤の成長も大きいと思います。リードで村上を助けているし、佐藤も(制球の良い村上の)リードは楽にできるのではないでしょうか」

自身の成長と、先輩たちが抜けた環境面の変化がマッチした。そこに、バッテリーの信頼関係が加わり、圧倒的な成績につながった。

松沼氏は、こうも言った。

「僕は特別なことは教えていません。(コーチの)玉井(信博)さん中心に指導された成果です。ただ、村上は、よく練習しますね。休めというのに投げたり。こちらがストップをかけるほどです」

うまくなりたい、という村上自身の意志が根底にある。