ソフトバンクがクライマックスシリーズ(CS)のファーストステージ第3戦で楽天に連勝し、6年連続のファイナルステージ進出を決めた。同点の7回に内川聖一内野手(37)が左翼へ決勝2号ソロ。初戦を落とした崖っぷちから、過去3度、CSでMVPを獲得しているベテランが、3年連続日本一への道を切り開いた。9日からリーグ王者の西武と敵地で対戦し、2年連続の下克上を目指す。

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CS男の真骨頂だ。内川が7回、左翼席へライナーで突き刺した。獲物は2番手宋家豪の内角低め、チェンジアップだった。「打った瞬間、何が起きたか分からなかった。来た球にうまく反応して飛んでいった。自分の予測と飛んでいったところが違った。久しぶりに興奮して頭痛くなる感覚だった。野球人生の中で印象に残る本塁打だった」。プロ通算2171安打を積み上げた天才でも説明できない1発だった。

負ければ終わりの第3戦。4回に浅村に先制4号ソロを許したが、その裏2死一、二塁から内川が岸の148キロ外角直球を逆らわず右前へ。二塁からデスパイネが激走。転がり込みながら左手で同点のホームを掃いた。内川は「デスパイネが走ってくれた1点。ありがたい」と感謝。今シーズンの対岸は7打数6安打、2本塁打、3打点。そのキラーぶりを買われ、7番から6番に上がった。チームの全2打点を稼ぎ、CS突破に導いた。シーズンは2割5分6厘で終わったが、大舞台で今年も抜群の集中力を発揮している。

143試合終了後、野手は2日間の連休だった。1日は大分でラグビーのニュージーランド代表・オールブラックスの練習を見学。非公開の練習も特別に見ることができた。「世界一のチームは違う。練習の集中力が見ていてびっくりするくらいだった。気持ちの切り替えの早さなど、ものすごく刺激を受けた」。W杯で来日中のラグビー王者たちから多くを学んだ。練習後には、選手たちとも触れ合い、CSへ向けた元気、パワー、集中力をもらって福岡へ戻ってきた。

楽天とのファーストステージは打率3割6分4厘、2本塁打、4打点。CSでは過去3度、MVPに輝いているCS男に、工藤監督も「CSですばらしい成績を残している。勝負強いところを見せてくれている」と笑顔でたたえた。内川は「日本一への道がつながった」と3年連続日本一へ前を向いた。工藤監督も満員のヤフオクドームのファンの前で「必ず所沢で勝って、帰ってきます」とファイナル突破、日本シリーズ進出を約束した。史上初の2年連続下克上へ、頼れるベテランが引っ張る。【石橋隆雄】