慎之助を見逃すな-。今季限りで現役を引退する巨人阿部慎之助捕手(40)が、9日から始まるクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ阪神戦に臨む。

8日、東京ドームでの全体練習は首脳陣、選手、スタッフ全員が引退記念に発売されたTシャツを着用した。胸にはマシソンが考案した「THE LAST RUN」と阿部本人の直筆で「感謝」がプリントされ、背中は代名詞の「10」。一丸で花道を飾る。

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東京ドームに「10」があふれた。黒地に白で刻み込まれた阿部の代名詞を背に、選手、スタッフがグラウンドに現れた。本物の「10」阿部は最後尾で登場。右翼にできた輪の中に笑みを浮かべながら加わった。チームが仕掛けた粋な演出に「ありがたいし、うれしいよね」と素直に喜んだ。

ムードづくりは隅々まで徹底された。決戦を前日に控え、宮崎のフェニックスリーグ組、ジャイアンツ球場のファーム残留組、リハビリ組の選手、スタッフを含め計250枚が配布され、全員が着用した。距離は離れていても心はひとつに。岡本も「普段とは違う感じでよかったです」と一体感を肌で感じた。

花道を飾ろうと動く周囲の思いに、主役も動いた。CSへ向けた練習を再開した1日、阿部の声かけで決起集会が開催され、選手、スタッフが一堂に会して焼き肉をほおばった。初戦の先発を担う山口は「雰囲気も上がっている。何とか最後、阿部さんにいい形で花を添えられるようにやっていこう、という気持ちは強い」と全員の思いを代弁した。

苦楽をともにしてきた原監督も「シーズン中と一緒。いろいろな場面で彼の力を必要としたしね」と厚い信頼を口にした。プロ19年間で70試合のポストシーズンを戦い抜いた阿部は、フリー打撃やノックなど普段通りのメニューで最終調整。「まずは初戦をみんなでとれるように。また明日から頑張るよ」。阿部はみんなのために。みんなは阿部のために。7年ぶりの日本一というゴールまで駆け抜ける。【桑原幹久】