崖っぷちの西武が61年ぶりの奇跡を起こす。12日に予定されていたクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第4戦は台風19号の影響で中止。13日に開催される。3連敗で後がないリーグ王者は、メットライフドームで先発投手陣が練習を行い、野手らは休養に努めた。チームは前身の西鉄時代の58年、巨人との日本シリーズで3連敗後、雨天中止をはさみ4連勝で日本一になった。真骨頂の底力で、まずは1勝をつかみ、反転攻勢に出る。

けたたましい警報音が、メットライフドームに響き渡った。西武が3連敗を喫した前夜から続く悪天候。投手練習中には報道陣の携帯電話から、埼玉・所沢市の緊急避難速報メールが一斉に鳴り響いた。大雨がドームの屋根を強く打ちつける中、先発投手陣は黙々と練習を行った。負ければ終戦の第4戦で先発予定の本田は「ベストを尽くしたい」と力を込めた。

崖っぷちに追い込まれたときこそ、山賊たちは前を向く。4番に座る中村は言った。「切り替えるとかいう次元の話じゃない。やるっきゃないってことですよ」と腹をくくる。61年前の58年。西鉄の大先輩たちは、3連敗後の雨天中止を機に、4連勝で日本一に上り詰めた。今季最大8・5ゲーム差から、大逆転でのリーグ2連覇を果たした底力は、西武が前身の時代から誇る真骨頂だ。

真価を発揮するために、束になって総力を結集する。CSファイナルステージでは、ソフトバンクに3試合連続先制点を献上。悪い立ち上がりから突き放され、敗れた。小野投手コーチは「可能性ある投手はどんどん突っ込んでいきたい。平井が早い回に投げることもあるかもしれない。(抑えの)増田が2イニング投げることがあってもいい。後がないわけだから。総力戦ですよ」。今季のブルペンを支えた勝ちパターンを次々と送り込むことも辞さない。

仕切り直しの一戦は「負け=終戦」の背水から再スタートする。辻監督も「1つ勝ったら3つあるかも」と可能性ある限り、前だけを見据える。逆襲への大きな1歩は、まず1勝。信じて突き進むしか、道はない。【栗田成芳】

◆58年日本シリーズVTR 3年連続の顔合わせとなった西鉄-巨人のシリーズは、西鉄が3連敗で一気に劣勢に。続く4戦目が雨天中止で1日順延となると、これで流れが変わったか、第4戦はエース稲尾が完投勝利。第5戦は9回2死から関口の適時打で追い付くと、延長10回に稲尾がサヨナラ弾。第6、7戦では4番中西がいずれも先制弾。投げては稲尾が完封、完投の活躍で大逆転での3連覇を達成した。

◆先に王手をかけたチームの突破率 日本シリーズ出場をかけたプレーオフ、CSで、先に王手のチームは昨年まで35チーム中32チームが進出。出場を逃したのは77年ロッテ、10年ソフトバンク、12年中日だけで突破率は91%。