来年もカープ! 広島長野久義外野手(34)が1日、海外FA権を行使せずに残留することを発表した。昨オフに巨人へFA移籍した丸の人的補償で広島に加入。移籍1年目の今年はプロ入り最少の出場数に終わったものの、終盤に4番として打線をけん引した。チーム内では実績が群を抜くだけに、新指揮官の期待も大きい。石原、クリス・ジョンソンに次ぐチーム年長者が佐々岡カープの先頭に立つ。

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残留表明も、長野らしく笑顔だった。「FAの紙を提出してきました」。長野の発言に言葉を失い沈黙する報道陣を見てうれしそうに「うそですよ~」と笑った。人を喜ばせようとするサービス精神を決断日にもさく裂させた。「来季も広島か?」との問いには「もちろん」と力強くうなずいた。2年目の来季への意思表示のようだった。

宣言期間最終日での結論となったが、最後まで移籍を考えていたわけではなかった模様だ。鈴木球団本部長と交渉できる日程も影響した。何より表明まで、長野流で誠意を示してきた。免除されたマツダスタジアムでの秋季練習に数日、志願して参加。佐々岡新監督にあいさつし「10月中はみんながいるので、体を動かしておきたい」と後輩たちと汗を流した。キャンプ参加の若手に加え、新たに1軍コーチとなった全首脳陣が顔をそろえた30日もウオーミングアップまでともに過ごした。この日まで言葉にすることはなかったが、行動で残留意思を示しているようだった。

移籍1年目の今季は1カ月半にわたって2軍生活を送り、出場試合はプロ入り最少の72試合に終わった。打撃3部門で自己ワースト。シーズン終盤に4番として打線をけん引した働きも、実績あるスラッガーには納得できるものではなかった。「チームが勝てなかったことがすごく悔しいですし、個人的にもふがいないシーズンでした」。広島でやり残したことは、まだある。

キャンプ地宮崎・日南で吉報を聞いた佐々岡監督は「チームの力になってくれると思う。残ってくれてチームにとって大きい」と喜んだ。長野だけでなく、この日の菊池を含め、会沢、野村がFA権を行使せずに残留を決めた。「皆さんの心が通じたと思います」と鈴木球団本部長。佐々岡監督が掲げる一体感を、広島がまた強くした。【前原淳】