球界の「今」にフォーカスする新企画「深掘り。」は、序盤戦を終えた2020年キャンプを取り上げる。

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巨人が初めて宮崎でキャンプを行ったのは、1959年(昭34)。長嶋が天覧試合でサヨナラ本塁打を放ち、王がデビューした年だ。

市中心部、大淀川沿いの「江南荘」を拠点に鍛えた。「読売巨人軍75年史」には、当時の水原監督が新人の王に配慮し、特例で長嶋と同室にした…とある。今はマンションとなった川沿いの一角に、ONコンビと巨人V9の胎動があった。今の宮崎総合運動公園をベースに変更した76年、宿舎は青島地区へ移った。

59年以前は海外でキャンプを行ったり、場所を転々としながら練習を重ねていた。同じ釜の飯を食い、じっくり個とチームを磨く方法は、巨人の強さをもって有効と証明された。移動、経費、練習試合のマッチング。宮崎は絶妙のバランスを備えていた。今は5球団が県内各地に散っている。

あこがれが市井に舞い降りるキャンプは、重ねる歳月に比例して、付近の生活に深く入り込んでいく。

JR九州は南郷駅を「ライオンズ南郷駅」に、油津駅を「カープ油津駅」と変更し、駅舎をチームカラーに染め上げた。オリックスを招致した清武町は「一年の計は元旦にあり」などの「三計の教え」を唱えた郷土出身の儒教者・安井息軒にちなみ、新球場を「SOKKENスタジアム」と命名した。

宮崎に足を運ぶ機会があるならば「食」に触れることは欠かせない。

大地に恵まれ、名店は数え切れないほどある。長く愛されるには、味もさることながら共通の魅力がある。南九州らしい温かなもてなしと、気兼ねなくくつろげる空間。繁華街から遠く離れた「野島食堂」は代表的で、松井秀喜も上原浩治も通い詰めた静かな店だ。野球人たちは今も昔も夜のしじまに身を委ねて骨を休め、つかの間を楽しんでいる。