巨人が「大江の12球」で流れを引き戻し阪神に快勝、優勝マジックを「17」とした。1点リードの3回無死満塁。3連続四球の戸郷の後を受け、変則左腕の大江竜聖投手(21)が登板。「何とか無失点で抑えて、カバーしてあげたいと思った」と12球でピンチ脱出。2回を無安打無失点の好リリーフで勝利に導いた。

「満塁キラー」の本領を発揮した。ボーアを外角のボールゾーンに逃げるスライダーで空振り三振。原口は内角へのスライダーで一邪飛。小幡も外角スライダーで空を切らせた。「1人1人、全力で投げ込むことができた。ホッとしてます」。今季、満塁では8打数無安打、防御率0・00。崖っぷちでの強さが際立つ。

「変則左腕、無死満塁、2回無失点」のワードを検索すれば、9年前の日本シリーズがヒットする。中日-ソフトバンクの第4戦。森福が1点リードの6回無死満塁を11球で火消し。「森福の11球」と称された。森福の172センチに対し、大江は173センチ。肘を下げ、度胸満点に攻める姿も重なる。

「すごいですね。1点、2点は覚悟したんですけどね。大江が殊勲者」と称賛した原監督は「大江の12球」のすごみをメンタル面から分析し、宮本投手チーフコーチは顔に着目した。

原監督 緊張した場面はリズムが速くなりがちなんだけど、変わらない。相当なキャリアを持っているような感じに見えるくらい、自分の投球ができる。

宮本コーチ 心臓、強いよね。元々は銀行マンみたいなヘアスタイルだった。髪形が七三分けの感じで。ようやく勝負師、アスリートの顔つきになってきた。

勝負の年と決意した4年目のシーズン。世間では銀行を舞台にしたドラマ「半沢直樹」が大ヒットした。3軍、2軍、1軍と“昇進”した大江が、マウンドで恩返しする。【久保賢吾】