本当にありがとう-。女優の美馬アンナ(33)が、夫のロッテ美馬学投手(34)への感謝を口にした。昨秋、楽天からのFA移籍が決まった同時期に長男が誕生。先天性障がいを抱えていた。今季10勝でチームをCSに導いた右腕は、家庭でも頼れる男としてフル回転。人生の転機に向き合い、支え合って過ごした新天地1年目を終え、一家には新たな夢も芽生えた。【取材・構成=金子真仁】

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美馬は「合格点だと思います」と自分をほめた。1年間を投げきって、6つの貯金でCSに導いた。大きな原動力があった。

「家族のために頑張ろうっていう気持ちが本当に強いです。大好きな家族が迎えてくれて、帰るのがとにかく楽しみで。大変な1年に初めての子育て。妻には本当に感謝しています」

思いは双方向だ。アンナ夫人もまた、美馬への感謝にあふれている。

「おむつ替えたり、抱っこしたり、率先してやってくれるんです。さすがに登板前日はしっかり寝かせてあげたいから別々の部屋で寝ようって。でもミニっちが夜泣きすると、心配だから~って来るんです」

美馬っち。出会った日からそう呼んだから、2人の子どもは“ミニっち”だ。愛らしいニコニコで絆がさらに強くなった。19年10月11日、待望の産声。でも想像もできなかった。右手首の欠損症だった。

「これもできない、あれもできないのかな…。病院でもずっと不安で、何をやっても涙が出ました。私がそんな感じなので、練習に行かずに自分のそばで寝泊まりしてくれて」

ぼそっと「おなかにいる時に分かってたら…」と声に出た。「分かってたら産まなかったの?」と返事が来た。動転し、自信もなく、すぐに答えが出ない。直後のよどみのない言葉は、鮮明に覚えている。

「俺は絶対産んでほしかった。分かってたとしても産んでって言った。おなかにいる時に分かってるかどうかというのは、自分たち親が覚悟できてたかできてなかったくらいの差。自分たちにはこの子じゃなきゃダメだったし、この子で良かったんだよ」

決意を固め、愛息の右手をSNSで公表することにした。「妊娠中から見守ってくださる方々に正直に伝えたかったです。ミニっちが生まれて私たちの新しい夢もできたし、全部がいい方向にいっている。隠すのは違うよね、って」

一家の新しい夢。

「何か使命がある、意味があるって思って。同じ障がいがあっても、活躍されている方々がたくさんいると知って、すごく勇気づけられました。せっかく美馬っちが野球をやっている。何かお手伝いができないかなって2人で話して」

美馬自身も「息子には何かに打ち込んでほしい。いろいろな人に出会ってほしい」と願い、オフも3人で世界を広げる。家族の夢に1歩ずつ進みながら“私の夢”も芽生えた。

「美馬っちが息子を抱っこして、グラウンドを歩いてほしい…かな。ロッテファンの皆さんがいる中で。母としてのひそかな夢です。ミニっちはまだ小さいから分からないかもしれないけど、障がいがあって生まれたことは恥ずかしいことじゃないよ、って伝えられると思うから」。

◆美馬アンナ 1987年(昭62)7月9日生まれ、神奈川県出身。子役で芸能活動を始め、08年に歌手デビュー。現在はレディ・バード所属で女優、タレント活動。14年1月に美馬と結婚。アスリートフードマイスターの免許を持つ。

○…前向き投稿が多いアンナ夫人のインスタグラムが話題だ。「われらのメンタルコーチ」とたたえられるなど、ロッテファンからの支持は絶大だ。美馬が打たれた日には、球場ポスターの鼻に指を入れる写真を投稿。「ファンの方々が言えないこと、やりたいことを代弁できるのは家族の特権だと思うので」。プロ野球選手の一家をユーモラスに伝えている。