ひげのエース、ここにあり。ロッテ石川歩投手(32)が遅ればせながらの今季初マウンドで、7回1失点と楽天打線を封じた。今季1勝目を手にした。

直球が走り、シンカーも絶妙なコースに落ちた。「緊張しました。でも、良かったと思います。真っすぐもシンカーも。コントロールが良かったと思います」と言葉を連ねた。

楽天岸とのタフな投げ合いが予想された。「1点取られたらきついなくらいで思ってたので。山口が(同点本塁打を)打ってくれたので、そこからしっかり投げれたかなと思います」と味方に感謝した。初回に連打で先制されたが、2回以降に乱れはなかった。

いつも通り、淡々と。投球フォームは微妙に変えた。「使えていなかった部分を使えるようになった」と話すものの、核心部分は「秘密です」と今もかたくなだ。2月に左足を痛め戦線離脱したが、復帰までの間にしっかりとフォーム固めに着手してきた。

フォームは「まだ0が1になったくらいです」と言うものの、大事なカード初戦で結果を出すのはさすがだ。投手としてやるべきことを淡々とやる。一塁手が飛びつくような右前安打では、一塁ベースカバーに向かう。オーバーランした打者走者を刺そうと、右翼マーティンが狙っているからだ。「あれは結構、ぼく、いつも待ってるんです」。ついに今日、送球が来た。狙い通りに右前打の楽天辰己をタッチアウト。レーザービームをグラブの芯で捕った。「あれ、痛かったです」と泣き笑いの顔をした。

少し開幕に遅れた分も「しっかり1年間、1軍で投げようと思います」と誓う。トレードマークのひげも初登板前に整えた。「コロナ禍で人にも会わないですし」と晩秋から伸ばしっぱなしにし、かなり長いままで今季用の写真撮影に臨んだ。

球場の大型ビジョンにも、その長い時期の顔写真が豪快に映される。「あっち(の写真)とのギャップを出したかったので。そういう意味でそりました」。去年とは少し違い、口ひげとあごひげが直結していない。本人も知ってか知らずか、自己最多14勝を挙げた16年開幕時と似たそり具合。吉兆も漂わせ、頼もしく合流した。【金子真仁】