チームのため、宮城のために、オリックス吉田正尚が打った。2-0の5回1死一、二塁。センターバックスクリーンへ迫力満点の15号3ランをたたき込んだ。

吉田正 浮いた変化球というか(投球を)待っていて、それをセンター方向に一番いい理想のスイングができたと思います。

理想が高く、自分に厳しい吉田正が、珍しく合格点を出した。3連敗阻止に直結した3ランには、それだけの手応えがあった。

首位打者を独走していても、自身の打撃へのくすぶる思いがあった。「状態を良くするために自分で探っていく。悪くなったときに(スランプが)早く切れるように」と、普段から工夫を重ねる。試合後に全打席、全球を確認。「頭のズレ(理解力)と体のズレ(技術力)を見定める」。翌日の打撃練習は、頭と体の差を埋めていく場。積み重ねは東京五輪につながった。

吉田正に「侍の心」が芽生えたのは09年。15歳の少年は、テレビに映る第2回WBCの決勝・韓国戦にくぎ付けになった。イチローが林昌勇から放った劇的な一打を「その前の川崎さんが凡退して、イチローさんに回ってくるのも師弟関係のストーリーがあるような気がしたんですよ」と振り返る。今年は自身が選出され「経験した人にしか分からないプレッシャーだったり、重みはあると思う。日の丸を背負って聞く国歌は、特別なものがあると思う」と“その瞬間”を想像する。

大舞台に立つ日まで、1本でも多く、1点でも多くたたき出す。好不調の波も、努力で克服する。それだけの打者が、侍にいる。【堀まどか】

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