輝の意地だ! 阪神佐藤輝明内野手(22)が、チームを救う10打席ぶり安打で勝利を呼び込んだ。

試合前に4番大山が背中の張りを訴え、大事をとってベンチ外に。代役三塁で7番を任されたのが、佐藤輝だった。スタメン三塁は5月19日のヤクルト戦(甲子園)以来4カ月半ぶり。その第1打席でいきなり魅せた。

0-0の2回1死一塁。メルセデスの内角の直球に詰まりながらも右前に落とし、出場3試合ぶりのHランプをともした。「チームの優勝に直結するような数字を残していきたい」。その意気込み通り、この一打で一、二塁に好機を広げ、1番近本の先制決勝の2点適時打を呼び込んだ。ただでさえ低空飛行が続く打線にあって、好調だった4番大山の離脱は逆転Vに陰を落とす。ベンチも4番にマルテを置くなど懸命に策を講じる中、必死のスイングで起用に応えた。

背番号8の雄姿に、この日から条件付きで入場を許可された応援団の太鼓も、ドドドドドンと激しく鳴り響いた。佐藤輝は一塁上で右の拳と左の拳を交互に上げ下げする「ハンドルポーズ」で喜びを表現。メルセデスを“乗りこなした?”かのような歓喜の舞だ。

このポーズの生みの親はこの日1軍初昇格した同期の栄枝裕貴捕手(23)だ。2月28日のヤクルトとの練習試合で栄枝が試合前に一発芸として披露し、ひそかにチーム内に浸透している。栄枝はこの日の試合前の円陣で、こうナインを鼓舞した。「シーズン前半の初めの気持ちを思い出して、あの時のいい自分を、今日はしっかり出していきましょう!」。佐藤輝も同期の言葉で初心にかえり、前半戦だけで20本塁打を放った打棒で虎党を沸かせた。

4回先頭、6回先頭はともに空振り三振でシーズン三振数が165となった。14年ゴメスの球団記録(166三振)にあと1に迫るなど、不調の波が続いている。7回の三塁守備では失策もあった。だが、大山不在の危機でここぞの1本を放ち、巨人戦の屈辱歴史を止めた貢献度は高い。残り10試合。チームの窮地を救った一撃をきっかけに、奇跡を導く豪打復活といきたい。【前山慎治】