阪神先発の青柳晃洋投手(27)が、7回を1失点に抑える渾身(こんしん)投球でネバーギブアップを体現した。ピンチも粘り抜き、広島九里と並ぶ両リーグ最多の12勝で勝率と合わせて投手2冠。巨人戦14年ぶりの勝ち越しを導いた。目指す逆転Vへ、週末ヤクルト戦の円陣で激しくナインを鼓舞した勝ち頭が有言実行。敗れた首位ヤクルトとの差を2ゲームに縮めた。エース級の活躍を見せる右腕が奇跡に弾みをつけた。

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青ざめるルーキーに、青柳は笑顔で声を掛けた。1点差の7回2死一塁、佐藤輝が三塁へのゴロをファンブルした。「テルがエラーしたんで、絶対に点を取られちゃいけないなと思って(笑い)。頑張りました」。3番坂本に内角へのスライダーを見極められフルカウント。それでも気後れせず、内にツーシームを投げ込み遊ゴロで切り抜けた。「よっしゃー!」。雄たけびに自信がにじんだ。

粘り強く、7回6安打1失点。広島九里と並ぶトップ12勝目を挙げ、勝率と合わせて2冠。3年連続の規定投球回にも到達した。「僕に勝ちがついてますけど、チームも勝って、優勝に向かっていけるのがよかった」。2回2死一、二塁の打席では、右前打を放ち先制機を拡大。一丸で勝てたことが一番うれしかった。

プロ6年目。今年は言葉でもチームを引っ張る。前カードのヤクルト戦では、先発投手ながら2日連続で声出し役を務めた。第2戦の9日は「何勝できる? 何敗しかできない、そんなの考えたヤツ、いらないから!」とハッパ。翌10日は「僕漫画読むんですけど、漫画で『自信とは何か』っていうのを読んだ。楽観的な勘違い、だったりする。みんな『今日、行けんじゃね?』って勘違いの気持ちを持って」。ポジティブワード連発で、固くなっていた仲間を笑わせた。「偉そうなことを言う立場ではないですけど。今日、目の前のことを頑張りましょうということを伝えました」。この日はマウンドで、戦い続ける姿を体現した。

矢野監督はけん引する右腕をたたえた。「(坂本が)本当にいいところを引き出しましたし、また青柳もね、それにしっかり応える。意識の高い投球でした」。チームは14年ぶりとなる巨人戦勝ち越しが決定。昨季0勝3敗だった青柳も、今季は2勝1敗。「最近は勝っていなかったので、今年は勝って勝ち越しに貢献できてよかった」。宿敵を倒し逆転Vへ勢いづいた。

このまま行けば次戦は19日の首位ヤクルト戦(甲子園)。「負けるわけにはいかないですし、自力優勝はないかもしれないですけど、ずっと勝ち続ければまだチャンスはある」。もちろんネバーギブアップ宣言。目の前の試合を必死に勝ちにいくだけだ。【磯綾乃】

▽阪神坂本(今季8度目のスタメンマスクで1失点と好リード)「ヤギ(青柳)の特徴のボールを低く集めて長打が出にくいところを一番に考えて。最少失点で粘ったのが勝ちにつながった」