シーズン2位で貯金21の矢野阪神は、クライマックスシリーズ(CS)のファーストステージで借金1の3位巨人に2連敗し、あっけなく終戦した。

前半戦の首位を快走し、2位に最大7ゲーム差をつけて、16年ぶりの優勝かと期待を抱かせたが、最後の最後でヤクルトに大逆転を許した。「矢野阪神 明と暗」と題して、敗因を検証する。

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8月下旬、2軍調整が続いていたマルテが、自身のインスタグラムに衝撃の書き込みをした。「BACK HOME SOON」。チームは首位を走るシーズン真っ只中。もうすぐ故郷に帰るとも受け取れる、突然の予告だった。ほかにも不可解な書き込みを残すなど、心は大荒れ。すぐに書き込みは削除されたが、それを見た関係者の間でも動揺が広がった。矢野監督も鳴尾浜まで出向いて心のケアを行うなど、思わぬ事態が起こっていた。

3番で前半戦の快進撃を引っ張り、矢野監督もMVPに挙げた助っ人に何があったのか。球団はコロナ禍で家族に会えない助っ人の心を案じ、五輪ブレークを利用して異例の一時帰国を認めた。だがマルテは球宴に出場した分、ロハスより5日間、出国と来日が遅れた。8月13日の後半開幕はロハスとサンズを登録。マルテは14日間の自主隔離を終え、9日に再合流していたが2軍発進になった。

すぐに1軍に戻れると思っただろうが、ロハスも絶好調。マルテは2軍で5試合に出場し、打率4割6分2厘、2本塁打と格の違いを見せたが、上がれる気配がない。その後、寝違えによる首痛を訴えるなど、1軍に呼ばれたのは8月31日だった。なぜ、前半あれだけ活躍した自分ではないのか。そんな疑問が頭に浮かんでいたのかもしれない。

外国人6人体制の期間が、一番うまく回っていた。コロナ禍の影響でロハスとアルカンタラの来日が4月までずれ込んだが、マルテ、サンズ、ガンケル、スアレスが主力となり、首位快走を引っ張った。エドワーズとチェンは不調もあって大半が2軍だったが、1軍の4人全員が大活躍したことで住み分けができた。

だが、歯車が狂い始めたのは、ロハスとアルカンタラが1軍戦力として状態を上げてきた夏場からだ。1軍バリバリで好調な6人をどう使い分けるのか。昨季はマルテが故障するなど、空いた穴を埋められなかった教訓を踏まえた8人制だったが、目立った離脱もない。誰か1人は2軍に落とす必要が生まれ、理由付けも必要になってくる。矢野監督は何度も「枠の問題があるので総合的に判断します」と頭を悩ませ続けた。

虎最多の外国人8人体制は大ファインプレーにも見えた。コロナ禍の入国制限で他球団の外国人選手の来日が遅れる中、マルテ、サンズ、ガンケルら2年目以降の外国人が春季キャンプに合わせて来日。外国人同士の競争心も相乗効果を生み、開幕にきっちり仕上げた。開幕ダッシュからの快進撃は、間違いなく外国人の活躍が要因の1つだった。それが、新外国人ロハス、アルカンタラが加わり、さらに加速するかに思われたが、外国人枠のやりくりに苦心する結果になった。

結局マルテは後半戦44試合で打率2割1分3厘、6本塁打、25打点。一度心を乱した影響も大きかったのか、前半戦のような働きはできなかった。そして、前半戦を引っ張ったサンズは、2年連続夏場の息切れで2軍に落ちた。この間、アルカンタラを不在だった7回の男にできたが、今度はサンズが2軍戦や練習試合で本塁打を打って状態を上げても、CSで登録さえできなかった。前半戦の功労者だったサンズは何を思い、終盤の練習に参加していたのか。一見強力な8人制の弊害も、失速の要因になった。【阪神取材班】

◆阪神外国人選手の去就 シーズン前半の快進撃を支えたサンズ、中継ぎのエドワーズは今季限りで退団する見込み。複数年契約のチェン、アルカンタラ、ロハスの3選手は残留。ガンケル、マルテは来季も契約更新する方針だ。2年連続セーブ王のスアレス投手(30)とは昨オフ2年契約を結んだが、2年目はスアレス側に選択権があり、球団は全力で残留交渉を進める。

独走からのV逸、CS敗退 矢野阪神 明と暗(2)