西武の新人3選手が5日、埼玉・所沢の若獅子寮に入寮した。ドラフト1位、隅田知一郎投手(22=西日本工大)はまさかのハプニング…。門出を見送られた長崎空港に財布を忘れ、担当スカウトに1万円を借りる“借金入寮”となった。ドラフト6位でチームの野手陣では4人目の体重100キロ超の中山誠吾内野手(22=白鴎大)は、よりスケールアップ。昨年12月の入団会見から2キロ増の105キロの“増量入寮”で、プロの扉をたたいた。

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心待ちにしていた入寮日に、“大うっかり”をやらかした。隅田は飛行機で長崎から羽田空港にやってきた。年末から「早く埼玉に行きたい」と気持ちはワクワク。羽田に到着し、スマホの機内モードを解除した。電波が入ると、異変に気が付いた。家族や見送りに来てくれた知人から相次いで連絡が入っている。

「財布忘れてるよ」

何と長崎空港に置いてきた。契約金1億円+出来高払い5000万円、年俸1600万円(金額は推定)の最高条件で入団したが、門出でまさかの一文無し状態。羽田から寮のある西武球場前までは品川、池袋で乗り換えて950円。その電車賃も払えない…。羽田で合流した担当の岳野竜也スカウト(35)に頭を下げ、事情を説明して1万円を借りた。大きな荷物を抱えながら電車を乗り継いで、無事に寮へ到着。「おっちょこちょいの部分もあるので、そういうところも直します」と苦笑いするしかなかった。借りたお金は「後で返します」。4球団競合の即戦力左腕は、まさかの“借金入寮”という形になった。

財布は忘れてしまったが、「値段は見ずに触って決めました」という西川製の抱き枕は大事に持参。「野球をする上で集中力はすごく大事な部分」と言う。集中を高めるべく、睡眠を大事にし、試合前日は「8時間ぐらい」取るという。寝る時は横向きのタイプ。波佐見高時代から「ずっと何かを抱いて寝ます」。約1メートルある枝豆のぬいぐるみを抱き枕としていた時期もあったという。

おっちょこちょいな一面はご愛嬌(あいきょう)で、野球への意識は高い。ドラフトでの評価は、あくまでプロ入り前の評価でしかないと知る。「スタートラインは一緒だと思う。どういう風にスタートを切っていくか。同級生や同期に負けないように年末年始を過ごしてきたつもり」と力を込めた。1年目から大きな戦力となる覚悟。シーズンでは多くの“貯金”を作り出す。【上田悠太】

◆隅田知一郎(すみだ・ちひろ)1999年(平11)8月20日、長崎県大村市生まれ。西大村小2年で軟式野球を始める。西大村中を経て、波佐見で3年夏に甲子園出場。西日本工大では1年春からリーグ戦に登板。4年春にチームの12季ぶりリーグVに貢献し、MVP、ベストナイン。21年ドラフトで4球団から1位指名を受け、西武入団。177センチ、76キロ。左投げ左打ち。