阪神が、ともに今季最多16安打11得点で快勝した。初回、佐藤輝明内野手(23)がヤクルト金久保からリーグトップに並ぶ先制の6号2ラン。自身最長の6カード連続弾で打線に火を付けた。雨空の神宮でこの回は中野、7回は小幡にも1発が飛び出し、久々にスカッと打ち勝った。ようやく今季2度目のカード勝ち越しだ。ここ9戦で4勝5敗と虎がジワジワ回復してきた。

阪神佐藤輝明先制2ラン、小幡竜平プロ初本塁打などで快勝/ライブ詳細

一瞬だ。初回1死一塁。金久保の初球143キロだった。佐藤輝の快音が響いて4秒弱、弾丸は右翼席に突き刺さった。雨中の試合を見守る虎党が沸きに沸いた。「すごく近いし声も届いていたので、感謝です」。自身最長の6カード連続アーチとなる先制6号2ラン。巨人丸、岡本に並びリーグトップに立った。

「積極的にいこうと。最近は打つべき球を打てている。日々、アップデートしています」

4番、2番、3番-。開幕から打順は移り変わってきた。4番は「チームの中心バッター」と意気に感じ、2番は「前からずっと早い打順が好き。打席数が回ってくるのはプラスでしかない」と喜ぶ。3番は4試合目。それぞれの景色を見てきたから分かることもあった。

「後ろにいいバッターがいてくれたら、僕とストライクゾーンで勝負してくれる。それはやっぱり大きい。協力し合って、お互いが打つことでいい打線になってくると思う」

4番大山、5番には近大先輩の糸井が控える。そして6番中野には今季初アーチが飛び出し、プロ2度目のアベック弾。「(ベンチで)隠れて筋トレしてるんですか? って。去年も神宮で1本打っているので、神宮好きなのかな」。同期入団の先輩イジりもバッチリ。3番佐藤輝を軸に、虎打線に強固な結びつきが生まれつつある。

ベンチ前では矢野監督から直々に、恒例の虎メダルを首にかけられた。「すごく意外だったんですけど、すごくうれしかった」とサプライズに目を丸くさせた。今季2度目の1試合チーム3発。「ムードが上がるなら俺もやりたい。まさか3回もできると思ってなかったけど。どんどん、ナンボでもやります」。指揮官も本気だ。

今季9度目のマルチ安打で打率2割9分7厘と3割目前。背番号8に導かれるように、打線は今季最多の16安打11得点を挙げた。ようやく今季5勝目で、2度目のカード勝ち越し。虎が息を吹き返してきた。【中野椋】

▽阪神矢野監督(佐藤輝の本塁打について)「一振りで完璧な感じやったし、このヤクルト戦から状態が、またちょっと上がった感じがある。バッティング練習の内容もいい。全ての内容がしっかりしているんで、このままさらに成長して頼もしくなっていってくれたら」

▽阪神井上ヘッドコーチ(2番糸原、6番中野のオーダーに)「いるメンバーでしか組めないし、こいつだったらこういう仕事してくれるかな、こいつだったらこういう打順の方が生きるんじゃないかという並び。結果的にそれなりの仕事をしてくれた」

◆佐藤輝と中野のアベック弾 21年5月4日ヤクルト戦(神宮)。1点リードの8回1死二塁で中野が左腕坂本の内角高め直球をすくい上げ、右翼席へプロ1号。「感触はよかった。入ってくれと願いを込めてボールを見ていました」。同期に刺激を受けた佐藤輝は、9回にサンズから2者連続、自身2戦連発の9号ソロ。「ルーキー2人でチームを盛り上げていけていることは、すごくいいなと思います」。球団の新人アベック本塁打は、望月と中村勝が72年5月30日大洋戦で放って以来49年ぶりとなった。試合は阪神が11-5で大勝した。

▼阪神が今季最多の11点を挙げて快勝した。2桁得点は昨年10月19日ヤクルト戦の11点以来で、今季初。16安打も今季最多。2桁安打は6度目で、過去5戦は1勝3敗1分けと苦戦。開幕戦の3月25日ヤクルト戦では、15安打しながら7点差を逆転され8-10で敗れていた。

○…高山は7試合ぶり今季2度目のスタメンで、2季ぶりに盗塁を決めた。1回2死から四球で出て、12球団トップの盗塁阻止率6割を誇っていた古賀から二盗。7回は1死から左中間へ二塁打を放ち、小幡の2ランを呼んだ。井上ヘッドは前回16日に先発起用した際に「調子や状態、相手との相性を加味しながら打線の入れ替えや組み替えをやっていきたい」と語っていた。昨季1軍出場がなかった15年ドラフト1位が存在感を取り戻し始めている。

○…糸原は4試合ぶりの先発となる「2番二塁」で効果的な役割を担った。1回1死から三塁線を破る単打を放ち、佐藤輝の2ランで先制のホーム。この回4得点を呼び込んだ。4回は再び左前打。6回1死三塁では遊ゴロ失策の間に打点がついた。不調に苦しんでいたが、打率を2割に戻した。2安打した19日に矢野監督は「健斗が元気になると、またムードが変わる」と話していた。