帰ってきた首位打者が、劇的サヨナラ勝利をお膳立てした。肩甲骨の骨挫傷で離脱していた巨人吉川尚輝内野手(27)が、今季初の「3番二塁」で1軍再昇格即スタメン復帰。

2点を追う9回無死一塁では、この日2安打目でつなぎ、中島宏之内野手(39)の逆転サヨナラ打を演出した。巨人は2位に浮上。堅実な守備と首位打者を走る巧打を持つ吉川の復帰が「反撃の巨人」を再進撃させる。

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心の底から、久しぶりに笑った。9回無死満塁。吉川は中島の一打で三塁から生還すると、サヨナラの生還者となる二塁走者増田大が本塁を踏むのを見届け、歓喜の輪に走りだした。5月にしてはやや肌寒い宇都宮の夜に、歓喜の水しぶきが舞う。仲間の輪に加わり、思い切り目尻を下げた。復帰戦で2安打を放ち、チームもサヨナラ勝ち。最終回は感情が出ていたと聞かれると「そうですね。もう」とやや視線を外し、少し照れくさそうに笑った。

13日前、笑顔が消えた。4日の広島戦で左肩付近に死球を受け、6日に抹消。首位打者を争う高打率を残し、1番をつかみつつある中でのアクシデント。翌5日からは今季最長の5連敗と、チームも苦しい時を迎えていた。

それでも、前しか向かなかった。「どうしようもないのでね、僕も登録抹消になったので。まあ…いい準備をできるようにと思っていました」。焦らず、腐らず。ジャイアンツ球場でのリハビリの日々では、できることを丁寧に積み重ねた。復帰戦に定めていた14日のイースタン・リーグ西武戦も、雨に流された。だが、切り替えて翌日の同戦で5打数4安打2打点。たった1試合でゴーサインを決め、1軍に帰ってきた。

1軍復帰戦も、余計な力みはなかった。試合前の円陣では声出し役に指名されると「お休みをいただいてました。順位も3位なのでこのカードはすごく大事だと思う。全員で一丸となって行きましょう。さあいこう!」と鼓舞。2打席目にチーム初安打を放つと、9回無死一塁では「ウォーカーがナイスヒットで出たので、つなごうという意識で」と右前打。「良い緊張感の中でしっかり試合に入れたのかなと思います」と静かに喜びをかみしめた。

「何でもできる」と復帰戦の吉川を今季初の3番で起用した原監督は「非常に頼もしいですよね。やっぱり穴は大きかったというのが正直なところでね」と目を細めた。土壇場で今季14度目の逆転勝ち。帰ってきた首位打者が、「反撃の巨人」に勢いと笑顔を吹き込んだ。【浜本卓也】

▽巨人ポランコ(9回無死満塁、1点差に迫る左前適時打でサヨナラ勝ちに貢献)「三振しないようにコンタクトすることだけを考えていたよ。みんながつないでくれたチャンスだったので打ててうれしいよ」

▽巨人メルセデス(2回1死二、三塁、2点適時打を浴び先制されるも、以降は8回5安打2失点と粘投)「2回に失点してしまったけれど、3回以降は強気のピッチングができました」

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