チームのために-。天才的なバットコントロールを持つ男が、自らバットを寝かせた。西武森友哉捕手(27)は初回無死一、二塁で第1打席が巡ってきた。先頭外崎が四球、源田が左前打で先制の好機を演出してくれた。迷いはない。「どんなサインでもバントしよう」。心に決めた。

その初球。いつものようにどっしり腰を落とす。ただフルスイングを封印し、左手をバットの中心に添えた。ここ7試合で3併殺。状況を見極め、サインではなく自主的に判断した。「ここ最近ゲッツーも多いですし、何とか先制点が欲しい場面だったので」。外角高め129キロシンカーに、うまく打球の勢いを殺した。見事にバントを成功させ、走者を進めた。犠打は今季292打席目で初。昨年4月22日以来、通算では5個目だった。

金色だった髪も今は黒く短くなった。そのわけは「ほっといてくださいよ。気分転換で」と笑う。そんな男の献身プレーが効いた。1死二、三塁となり、山川は二飛に倒れるも、呉念庭が先制2点適時打を放った。

試合前までZOZOマリンは1勝7敗と大きく負け越す鬼門だった。ただ初回の2点が大きく、1点差で逃げ切った。おのおのが最善の役割を考え、遂行できる。負ければ、陥落の危機だった首位をしっかりキープした。【上田悠太】

○…高橋は制球に苦しみながらも、8勝目をマークした。4回までに5四死球も、粘りの投球。6回まで6安打の3失点に何とかまとめた。前橋育英で13年夏の甲子園を制した右腕は「うまく自分をコントロールできない中で、森さんがリードしてくれて、それに応えようと一生懸命、腕を振った。ただ悔しいマウンドでした」と語った。

▽西武辻監督(苦手ZOZOマリンで勝利)「大きな1勝よ、もちろん。ここは相性が悪かったしね」

▽西武呉念庭(1回に先制の2点適時打)「得点圏にランナーがいたし、僕が何とかしなければと思って打席に入った。先制点が取れて良かった」

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