横浜からフリーエージェント(FA)宣言していた三浦大輔投手(34)が11月30日、横浜市内の球団事務所で会見し「強いところを倒して優勝したい。横浜が好きだからです」と残留の理由を語った。三浦はこの日午前、大阪に行き、阪神に直接断りを入れてから横浜に戻った。会見では何度も「申し訳なかった」と繰り返した。横浜の提示条件は3年10億円プラス出来高払い(金額は推定)。三浦は事実上「生涯横浜」を決め、将来の幹部候補となる。

 三浦は募った思いをぶつけるように、口を開いた。

 三浦

 最終的には、いろいろ考えた結果、三浦大輔はどうしたいのか?

 ということです。野球を始めたころから、高校でも、プロに入ってからも、強いところを倒して優勝したいというのが一番、強かった。

 これが、三浦の生きざまを表していた。プロ入り以来、17年間。優勝は1度しか味わっていない。関西出身で、小さいころからあこがれた甲子園の魅力は大きかった。阪神なら優勝の可能性も高いはず。「気持ちの揺れはあったし、(阪神移籍の)可能性も選択肢の1つにあった」。だが、最後は愛着ある横浜で優勝を目指す道を選んだ。「横浜が好きだからです」。

 言葉の端々から、律義な性格がにじみ出た。FA宣言したことで、自分の予想以上に周囲がヒートアップ。選手の権利を正当に行使しただけだが、約30分の会見では「すいませんでした」「ご迷惑をかけてしまった」「申し訳なかった」といった発言を10回以上も繰り返した。

 行動にも現れた。球団事務所には予定されていた午後4時を20分以上、遅れて到着。時間に正確な三浦には珍しかった。実は、大阪を日帰りで訪れた帰りだった。2回の交渉の場を持ってくれた阪神の沼沢球団本部長らに会い、直接断りを入れた。「自分の中でけじめをつけたかった。直接、話さないと、横浜とも話せない」と筋を通した。

 横浜にとって、エース流出という最悪の事態は免れた。村上チーム運営部門統括は「三浦選手の存在感をつくづく感じました」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。FA残留したことで、事実上、生涯ベイスターズとなる。将来的な監督候補の芽も出てきた。球団関係者は「当然、指導者という話は出るでしょう」と言った。

 移籍か残留か悩みを深めていたころ、三浦は親しい人から「何が正解かはない。選んだのが正解だ」とアドバイスされたという。「来年、自分で結果を出さないといけません」と決意も新た。あとはグラウンドで、選択が正解だったことを証明するしかない。【古川真弥】