入団5年目の巨人東野峻投手(22)が、先発ローテーション入りへ猛アピールを見せた。7日、フリー打撃に初登板し、阿部、脇谷を相手に42球中ヒット性の打球は4本。阿部のバットを2本へし折るなど、ボールの威力を証明した。今オフに、力を最大限ボールに伝えることを意識した新フォームに着手。新背番号「17」がグライシンガー、内海、高橋尚に次ぐ「第4の男」に浮上した。

 フッと息をついた。東野はへその下の丹田(たんでん)に意識を集中させた。13球目だった。こん身の直球が阿部の懐をえぐる。鈍い音とともにバットが真っ二つ。破片が一塁ベース方向にぶっ飛んだ。「多少力んでしまいましたが、感じとしては良かったです」と納得の表情で振り返る。先発ローテ入りを懸けた情熱を体内から発散させた。

 “破壊力”は想像以上だった。17球目、今度は阿部のマスコットバットをグシャリ。阿部は「真っすぐはシーズン中と変わらなかった。今年はやってもらわないといけない選手ですからね」と評価し、バットから伝わる闘争心を意気に感じた。

 2つの「軸」こそが、今年のテーマだった。このオフ、新たに塩見トレーナーとコンビを結成。「体の中に円柱が1本入っている感じ」の新フォーム完成へ練習メニューを組んだ。へその下の丹田、重力に逆らわない体の動きを意識付けさせることに重きを置いた。「自分の理想は(ソフトバンクの)斉藤さんや(西武の)涌井。後ろは小さく、エネルギーを前にぶつける」と言い切るように、軸の安定が不可欠だった。グラウンドに散らばったバットの残骸(ざんがい)が、練習の成果を証明した。

 心の軸も追求した。東野は眠りにつく前、勝利の瞬間や胴上げシーンを思い浮かべる。「良いイメージを頭に刻み込みたいんです」。プラスイメージとともに、朝を迎える。宮崎キャンプ出発前には、1冊のメモ帳を購入。頭で思い描いた練習メニューを書き記し、キャンプでの道しるべをつくった。「目的意識を持って練習する。書いておけば、常に意識できますから」。ドッシリと腰を据えて、練習する環境も準備した。

 原監督からは「今年のチームを占う上に置いて、重要な役割を持っている投手。順調ですね」とキーマンに指名された。東野は言う。「昨年はプロ野球界に残れるかを懸けた年。今年は自分の野球人生が決まる年だと思う。先発ローテに入り、2ケタ勝利を目指したい」。22歳の心の軸はまったくぶれていない。【久保賢吾】

 [2009年2月8日9時16分

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