<ソフトバンク7-4広島>◇22日◇福岡ヤフードーム

 主砲の復帰がビッグイニングを呼んだ。ソフトバンク松中信彦外野手(36)が広島戦で「6番DH」で復帰。3回に9者連続出塁の猛攻で大量6点を奪い、松中自身も復帰初安打を左前適時打で飾った。投げては和田毅投手(29)が単独トップとなる交流戦15勝目をマーク。交流戦勝敗も五分に戻したソフトバンクが、反攻態勢を整えた。

 勝利につながるビッグイニングが、松中に贈られた復帰祝いだ。広島に1点を先行された3回。山崎の左前打で始まった猛攻が止まらない。本多の同点打、オーティズの2ラン。逆転しても、まだ、終わらない。後続に松中が控えていた。2点リードで1死一、二塁。今度は自らの番だ。松中がバットのヘッドを落とさず、低め直球を左中間方向にはじき返した。

 松中

 難しい球だったけれど、打ててよかった。

 レフト迎の前に落ちる際どい一打。二塁走者の小久保は、捕球される併殺プレー覚悟で、打った瞬間スタートを切っていた。

 小久保

 ノブヒコに打点がついてよかったわ。

 決勝弾のオーティズも「松中さんが帰ってきて打線に厚みが増した」と振り返った。主砲の復帰戦。誰もが、松中への思いをグラウンドで表現した。

 背番号3が充電期間を終えた。打率1割9分7厘で4月29日に出場選手登録抹消。首脳陣に自ら2軍降格を申し出て、調整期間をとった。昨年途中、次男が重い腎臓病を患った。一家の楽しみだった「こどもの日」目前の決断。8歳の長男に声をかけられた。「仕方ないよ。後半は打ってね」。愛息に勇気づけられた男に新たなモチベーションが芽生えた。「今年は妻の誕生日に試合がある。絶対本塁打を打つ」。厳しいヤジが飛ぶときもあったが、2軍戦15試合出場。闘病生活を支える恵子夫人に贈る誕生日(7月19日)プレゼントを誓い、生まれ変わった。

 松中

 僕の中ではリセットされた。前回とは違う自分がいる。

 打席に入るときの入場曲は長男の大好きなNHK大河ドラマ「龍馬伝」のテーマソングに変わった。「頑張らんといかんがぜよ!」と愛息に背中を押され、球場入りしていた。

 3回は松中の一打を含め、チーム今季初の9者連続出塁。秋山監督が「ノブヒコに1本出てよかったんじゃないか」と最高の再出発に目を細めた。さらに、指揮官は「松中左翼?

 守っていける。オーティズのサードもね」。23日以降、交流戦ビジターシフトの左翼松中、三塁オーティズ案も早々明言した。

 松中の6番出場は、03年5月6日以来、7年ぶり。「勝負、プロの世界は結果がすべて。自分の打撃をすれば、自ずとクリーンアップに戻れる」(松中)。もう、迷いも、不安もない。優勝へ、不可欠な主砲が帰ってきた。

 [2010年5月23日11時3分

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