内川+イチロー=打撃の神様!

 ソフトバンク内川聖一外野手(32)が最強の新打法を手に入れた。マーリンズと合意したイチローの勧めもあり、鳥取市内のトレーニング研究施設「ワールドウィング」で自主トレ中。イチローと同じ構えで、よりボールを待てると実感する。「ボールが止まって見えた」の名言を残した故・川上哲治氏の域に達すれば、8年連続打率3割超えは確実だ。

 内川が鳥取で理想のフォームを手に入れた。27日、小雨の降る布施総合運動公園。寒さをものともせず、ロングティーで軽々と120メートル超えの打球を連発した。昨年までのように体を前傾させず、骨盤を立たせるイチローと同じ構え方。背骨が伸び、スイングの初速が速くなる。加速度も上がり、ボールをじっくり見られるようになったという。

 「構える時の姿勢によって、手がこれだけ速く動くんだと思った。インパクトまでの時間が長くなればボールを長く待てる。ボールが長く見えると打てる確率も高くなる。小さく、速い、強い動きが大事」

 昨年11月の日米野球期間中、米国から帰国していたイチローと会食。「初動負荷トレーニングは今の自分にはなくてはならないもの」という話を聞き、かつてイチローが通っていた「ワールドウィング」の門をたたいた。「毎年足をケガをしていて、新しいことに挑戦しケガを防ぎたいと思っていた。関節の可動域が広がる楽しさを感じながらやれているし、力を使わなくてもこんな動くんだという驚きがある」。

 同施設にはプロゴルファー青木功や中日山本昌、岩瀬、山井ら長く現役を続けているスポーツ選手が多く通う。内川も当初は1年でも長く戦える体を手にいれることが目的だった。だが、神経と筋肉の協調性を高め、動作を改善する初動負荷トレーニングを行ったことで、新たな打撃フォームが誕生した。

 同ジムの小山裕史代表は内川のフォームに「数年前から座骨や太もも裏にストレスの掛かる動きをしていたが、骨盤の位置を修正し、体のバランスに任せて動けている」と分析。「能力はトップクラスだし、イチローの表現と共通する部分がある。これからもっと動きが変わってくると思う」と太鼓判を押す。

 「打撃の神様」こと故・川上哲治氏は現役時代「ボールが止まって見える」という名言を残した。内川も新フォームでスイングスピードが上がり、選球眼が高まりそう。目指すは右打者では史上初となる8年連続打率3割超え。いや、川上氏のようにボールをじっくり、止まったように見ることができれば…神様の域に手を伸ばす。【福岡吉央】

 ◆イチローと初動負荷トレーニング

 イチローはオリックス時代の2000年1月、先輩の藤井が通っていた鳥取の「ワールドウィング」で自主トレした。同年春の宮古島キャンプではオリックスがストレッチマシンを購入し設置。01年のメジャー移籍後は、マシンを自費で購入。自宅に設置し、トレーニングを続けている。

 ◆川上哲治の名言

 試合終了後に宿舎で深夜まで素振りをするなど練習熱心だった川上は、50年に打撃投手を個人的に雇い、多摩川グラウンドで練習していた。その時に、球が止まって見える感覚に襲われ「ボールが止まって見えた」。このエピソードが後に川上が残した名言の1つとして取り上げられるようになった。