本塁打、打点でパ・リーグの2冠に輝いた西武中村剛也内野手(28)が来季から3年総額で10億円超の契約を結んだ。15日、西武ドームで契約更改交渉に臨み、倍増の年俸2億5000万円プラス出来高でサイン。順調なら来季中に国内FA権を取得する状況での大型契約で、チーム最高年俸を更新した。メジャー挑戦する中島裕之内野手(29)に代わる「チームの顔」として、来季目標にプロ野球記録の55発超えを堂々と宣言した。

 中村が契約年数まで“おかわり”した。西武では異例となる複数年契約に「言われた時はビックリした。来年FAをとっても、残ってほしいという気持ちが感じられた。ライオンズがほとんどやってない複数年なので、本当にうれしい」。出来高がついて3年契約で総額10億円超。倍増した年俸2億5000万円は、年ごとに見直しされる変動制。特大ホームラン級の契約を結び、自信に満ちあふれた表情で会見した。

 メジャー挑戦する中島を除けば、2億1000万円の涌井を抜いてチーム最高年俸となる。新しい“チームの顔”にふさわしい発言も出た。「ホームラン王を3回とれたし、55本以上を近い将来の目標にしたい。1カ月に1本増えれば見えてくる」。これまでは本数への興味を極力封印してきたが、積み重ねた実績にようやく納得。プロ野球記録更新を、堂々と口にした。

 球団はFA流出阻止をにらんだ破格条件を提示した。順調なら、中村は来季中に国内移籍が可能なFA権を取得する。複数年契約を提示した鈴木球団本部長は「個人名は控えますが、複数年は過去もいた。中村選手にも、特別に残ってほしい意思の表れです。これだけホームランと打点を稼ぐ打者は日本で他にいない」と誠意を示した。帆足、ミンチェが今オフ移籍したように近年のFA退団続出を問題視。外国人選手でも代えがきかない中村の流出に危機感を感じ、残留を最優先に検討した結果だった。

 基本的に複数年を認めない球団方針を転換させるほどの活躍ぶりだった。今季放った自己最多タイ48本塁打は、2位のソフトバンク松田に23本差をつけた。パ本塁打総数の約11%を1人で打った。飛ばない統一球の影響を感じさせず「今年に限っては、みんな苦しむなかで、そこそこ打てた。満足はしていない。あと2本で50本なのに、48本は中途半端だった」と真顔で言った。ライオンズの4番は来季、ファンの夢も乗せて55発に挑む。【柴田猛夫】

 ◆西武の複数年契約

 ブロス、カブレラ、グラマンらの外国人選手を除くと前例は少ない。FA絡みで97年にオリックスから加入した中嶋聡捕手、FA宣言して残留した伊東勤捕手と各3年契約。07年にヤクルトから加入した石井一久投手と2年契約しているが、FA以外の選手とは単年契約が基本。07年オフには和田一浩外野手に2年総額6億円を提示し残留を要請したが、和田は契約せずFAで中日に移籍した。(金額は推定)