広島にドラフト7位で入団した九州四国IL徳島・弦本(つるもと)悠希投手(21=大商大中退)は、ラストチャンスをものにした。指名されなければ野球を辞め、以前から興味のあった料理人を目指すつもりだった。

 10日、新人選手9人が広島市内で体力測定を行った。弦本も脚筋力の測定などで「キツイです」と顔をしかめたが、その後マツダスタジアムの見学でグラウンドにも立った。

 プロ入りの夢を追って大学中退し、09年に独立リーグ入り。手取りは10万円に満たなかったが、必死で練習に打ち込んだ。12月から2月の3カ月間は契約期間外のため無給。大阪の実家で運送業を手伝った。夜を徹して冷蔵庫など重い荷物をトラックへ積み込む作業に従事。測定で握力が右61キロだったのも、そんな作業のおかげだ。

 今季は「来年は絶対に(アルバイトなどは)したくない」とさらに練習を積んだ。抑えとしてリーグで活躍した実績を買われ、広島に指名されると12球団最速で契約を結んだ。夢をかなえた今でも「あのときのハングリー精神は忘れたくない」と話す。苦労人右腕が、次は1軍マウンドを目指す。