【マイアミ(米フロリダ州)14日(日本時間15日)】侍ジャパンはWBC準々決勝でベネズエラに打ち負け、連続世界一の夢がついえた。だがその一戦で阪神の主砲コンビが爪痕を残した。1点を追う3回、「2番右翼」で出場した佐藤輝明内野手(27)が同点二塁打、続く途中出場の森下翔太外野手(25)が一時勝ち越しの3ラン。28年ロサンゼルス五輪出場権をかけた来秋のプレミア12では、日の丸の主力を期待されるアイブラック兄弟が4打点。かけがえのない経験を携え、タイガースに帰ってくる。
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佐藤と森下の視線の先には、お祭り騒ぎのベネズエラベンチがあった。悔しさとともに、燃えたぎるものが全身を貫いた。2人がワールドクラスになるための、新たな出発点だった。
日米MVPが形成した1番大谷、2番佐藤の夢オーダー。1-2で迎えた3回だ。不振の近藤に代わってスタメン起用された佐藤が、右翼線を鋭く抜いた。MLBで2年連続12勝中の左腕、R・スアレスから同点二塁打だ。アクーニャと大谷が先頭打者弾を打ち合う異次元の展開。2回に長打攻勢で1点奪った相手が勢いづきそうな流れを、しっかり引き戻した。
続いたのは弟分の森下だ。1死二、三塁から、低めのチェンジアップを拾い上げた。やや泳ぎながらも強くはじかれた低い弾道が、左翼席に飛び込んだ。ほえまくりながらベースを1周。「ああいうところで打つことを求められてWBCに選ばれたと思うのでよかった。自分の打撃ができた」。勝負強さを買われ、新人年から井端監督に代表に呼ばれた。アウェーの雰囲気を一変させる勝ち越し3ラン。指揮官はベンチを出て、ガッツポーズで喜んだ。
1次ラウンドでは控えに回り、影を潜めていた。出番は意外な形で訪れた。初回、鈴木が二盗を試みた際に右ひざを負傷。急きょ2回の守備から中堅に走った。自主トレを見学するなど親交があった先輩の代役。経験の浅い中堅だったが、戸惑いはなかった。「二塁で誠也さんが痛がっている姿を見て、あるんじゃないかと思っていました」。森下らしく、強い気持ちをフィールドで爆発させた。
侍ジャパンを引っ張ってきた大谷も阪神勢を頼もしそうに見つめた。「本当に2人とも素晴らしいアットバット。(森下は)誠也がああいう形で退いたあと、難しかったと思うけど、しっかりと代役を務め上げたんじゃないかなと思います」と奮闘ぶりをたたえた。
壁は厚かった。3点リードを猛打ではね返された。沈痛なムードの中、佐藤は「違う野球を肌で感じられたのは大きな経験」と言った。森下も実感を込めた。
「ベネズエラの長打力、走塁の意識や一体感はすごい。メジャーリーガーの人たちと戦って体験できたことは自分の基準になった。まだまだ足りない。野球の怖さ、個々の強さも他の大会とは全然違ったレベル。この経験を生かせるようにレベルアップしたい」
今秋のアジアプロ野球チャンピオンシップに続き、来秋には、野球競技が復活する28年の米ロス五輪出場権をかけたプレミア12が開催される。その主力を期待される佐藤と森下が、爪痕を残した体験は、何ものにも代えがたい。世界一奪回への挑戦が再び始まる。

