東前頭6枚目魁聖(31=友綱)が労せず勝った。この日の対戦相手、貴景勝が休場。朝稽古中に“朗報”を受けた。相手を思えば手放しで喜べないが、心の中で「ばんざ~い! 休みだ~!」と叫んだ。思わぬ10勝目。疲れのたまる終盤戦で、しかも怪物・逸ノ城に初黒星を喫した翌日の不戦勝に「昨日で全部パワー使って筋肉痛だったんで」と笑った。

 不戦勝・不戦敗制度が始まった1928年3月以降、魁聖ほど不戦勝に愛された力士はいない。16年名古屋場所で史上21例目の「1場所2個」(初日=大砂嵐戦、7日目=琴奨菊戦)を経験し、今回は17年九州場所3日目の碧山戦、初場所6日目に安美錦戦に続き、3場所連続ゲットの“離れ業”となった。

 通算獲得数10個は出羽錦の11個に次ぎ、栃乃洋、魁皇に並ぶ史上2位。他の3人は全部幕内で手にし、幕内在位数は出羽錦77場所、栃乃洋81場所、魁皇107場所だが、魁聖は最初の1個を手にした十両の6場所を含めても、まだ46場所。驚異の“ごっちゃん率”なのだ。

 「みんな、オレの時に休んでくれて優しいね」と冗談が口を突く。鶴竜とは残り4日でまだ1差。強運が最高のフィナーレを呼ぶかもしれない。【加藤裕一】