プロボクシングの2020年度年間表彰選手が28日に発表され、WBAスーパー・IBF世界バンタム級王者井上尚弥(27=大橋)が3年連続4度目の最優秀選手賞(MVP)に選ばれた。昨年10月のジェーソン・モロニー(30=オーストラリア)戦の7回KO撃破もKO賞に選ばれ、2冠に輝いた。また、WBO世界スーパーフライ級王者井岡一翔(31=Ambition)は技能賞、昨年大みそかの田中恒成(25=畑中)戦が年間最高試合に選出された。

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1試合でもインパクト絶大だった。昨年10月、米ラスベガスに初進出した井上はメインイベントでモロニーに7回KO勝ち。2団体統一王者として防衛成功し、海外で存在感を示した。2年ぶり4度目のKO賞も獲得し「1試合だけでしたが、ラスベガスでのメインの試合がすごく評価されたのかなと。自分も納得する内容での勝ち方もできた。受賞はうれしい」と自信に満ちた笑みを浮かべた。

3年連続MVPは01~03年の徳山以来、史上6人目。平成以降の4度目受賞は長谷川に並びトップ。12年のプロデビューから8年で4度もMVP受賞というハイペース。最多の5年連続も狙えそうな勢いだ。35歳まで現役を続ける意向の井上は「自分が考える現役はあと8年。それに向け(今後も)受賞できたら」と最多記録更新に意欲的だ。

1月から所属ジムで本格的なスパーリングを開始しており「強度的にはハードにやっている。いつ試合が決まってもいい準備をしている」。コロナ禍で世界戦開催は不透明な状況だが、21年の目標は「今年こそ、もう1つベルトを増やしていきたい」と日本選手初の3団体統一王者を掲げた。

MVPは36票の有効投票のうち、井上が20票、続いて井岡が16票と4票差だった。井上は「井岡選手に票がいっても全然おかしくない」と田中との2度目の防衛戦を絶賛しつつエースの自覚も十分。「ボクシング界だけに限らず、日本のスポーツ界で、もっともっとトップの存在にいけるようにしたい」と、高い頂を見据えていた。【藤中栄二】

▽WBO世界スーパーフライ級王者井岡も2冠に輝いた。MVPは逃したものの、2年連続の技能賞、大みそかの田中との2度目の防衛戦が年間最高試合に選出。コロナ禍で、注目の日本人対決実現に尽力した関係者、ファンに感謝しつつ「その試合を年間最高試合、技能賞として評価して頂きまして大変うれしく思っておりますし、また励みになります。今年もさらなる高みを目指して精進して参ります」とコメントした。

◆年間MVP連続受賞メモ 日本初の世界王者となった白井義男(1949~53年)、具志堅用高(76~80年)の2人が5年連続でトップ。4年連続は渡辺二郎(82~85年)、3年連続はファイティング原田(64~66年)、徳山昌守(2001~03年)、今回の井上尚弥の3人。3年連続以上のMVP受賞は6人だけ。なお最多受賞も白井、具志堅の5度が最高で、原田、渡辺、長谷川穂積、井上が4度で続く。