ボクシングWBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(28=大橋)が12月14日に東京・両国国技館でIBF世界同級6位アラン・ディパエン(30=タイ)との防衛戦を行うと29日、所属の大橋ジムが発表した。19年11月のノニト・ドネア戦以来、約2年1カ月ぶりの国内世界戦となる。来春の王座統一戦をにらみ、対抗王者2人と同じ「右の強打者」を迎える。ダブル世界戦としてWBO世界ミニマム級1位谷口将隆(27=ワタナベ)が、同級王者ウィルフレッド・メンデス(24=プエルトリコ)に挑戦する。

   ◇   ◇   ◇

待望の凱旋(がいせん)マッチが決まった。「聖地」米ラスベガスで2戦連続の防衛を成功させた井上にとって、ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)のバンタム級決勝、ドネア戦以来の国内世界戦となる。29日に横浜市の所属ジムで会見し「日本での試合は2年ぶり。ようやく日本でできることに喜びを感じながら、その日に向けて練習していきたいと思います」と歓迎。6月のダスマリナス戦(フィリピン)以来、約半年ぶりのリングへ気合を入れた。

78・5%のKO率を誇るディパエンは右構えの強打者。来春、国内でWBO同級王者ジョンリール・カシメロ(32)、WBC同級王者ノニト・ドネア(38=ともにフィリピン)との王座統一戦を計画。両王者ともにディパエンと同じ強打を誇る右構えスタイルだけに「仮想」王座統一戦の意味合いが強い。大橋秀行会長(56)は「動画を見たが、好戦的でパンチも強い選手。油断できない。ボクシングはパンチ1発で何が起こるかわからない。スリリングな試合になると思う」と予想。井上は「タイ人は根性があるなという印象を受けています」と警戒した。

興行は5000人前後の有観客を予定している。コロナ禍の首都圏ボクシング興行としては大規模となる。「日本のみなさんの前で試合をやれることに、本当に気合が入っています。この状況下で限られた方の前ですが、何かを感じてもらえる試合をしたいと思います」と声をはずませた。

来春には待望のビッグマッチが待っている。井上は「来春に統一戦があるようなので、そこに向けて。2年ぶりの日本の試合というモチベーションがある。何かを感じてもらえる試合をしたい」と自信の笑み。ディパエン撃破で、来年の4団体統一に向けて弾みをつける構えだ。【藤中栄二】

◆井上の対抗王者の動向 WBC同級王者ドネアは12月11日(日本時間12日)に米カリフォルニア州カーソンで、暫定王者レイマート・ガバリョ(フィリピン)と初防衛戦に臨むと、米専門メディアが報じている。WBCからガバリョとの対戦指令を受けていた。また、WBO同級王者カシメロも、WBOから同級1位ポール・バトラー(英国)との対戦指令を受けている。カシメロ-バトラー戦の興行権は、ドネアが契約を結ぶプロベラム社が保持し、年内開催を目指している。同社は米プロモート大手ゴールデンボーイプロモーションの元CEO、リチャード・シェーファー氏が設立した。