赤井沙希(36)が、13年8月にデビューした地でラストマッチに臨み、10年間のプロレスラー人生を終えた。現在もKO-D6人タッグ王座を保持するEruptionの坂口征夫、岡谷英樹と最後のリングに上がるも、東京女子・山下実優の強烈な蹴りにリングに沈んだ。

試合後にはセレモニーが行われ「どうしても伝えたいことを届けたかった」と、用意していた手紙を読み始めた。「10年前に一員になって楽しかったり、ムカついたり、一緒に何かをしたり。自分が一番欲しかったものに気付いた気がした。心から愛してます」とファンと仲間に感謝の思いを伝えた。

「最後まで強い姿でいたい」と話していた。丸藤からは何度も逆水平を浴び、山下からは強烈な蹴りを食らい、樋口には抱え上げられ、リングにたたきつけられた。何度攻撃を受けても立ち上がり「赤井コール」に応えたが、最後は力尽きた。

5月の引退会見後、休むことなく引退ロードを駆け抜けた。9月には団体最高峰のKO-D無差別級のベルトに初挑戦。史上2人目の女子王者誕生とはならなかったが、王者クリスをあと1歩まで追い詰めた。

戦友たちからエールももらった。10月23日の東京女子では、所属選手全員を相手に「23人斬り」で勝利。3日新宿大会では「たぶん一番試合してくださった」という平田一喜と最後のシングルマッチ。試合終盤には、平田だけでなく、ぶつかり合ってきた仲間たちから手紙で思いを伝えられるサプライズもあった。

元ボクサーで俳優の赤井英和を父に持つことでも注目された。10代からモデル、タレントとして活躍。13年からプロレスラーとして本格デビューした。14年には女子選手として初の「プロレス大賞新人賞」に輝いた。「強くて楽しいところが好き」というDDT唯一の女子レスラー。長身を生かしたダイビング・ボディアタックやビッグブーツなどで男子レスラーと互角に渡り合った。

「ここまでの道のりを考えれば達成感がある」と言い切った。今後はDDTを裏方として支えていくという。DDT高木社長のオファーに「みんなを輝かせる側に回らせて下さい」と応えた。5月の引退会見では「枯れて朽ちていく花ではなく、美しいまま散る花でいたい」。10年間リングに魂を注入し続けた赤井は、その言葉通り、最後のリングで美しく華麗に舞い、プロレスラー人生の幕を閉じた。【松熊洋介】

◆赤井沙希(あかい・さき) 1987年(昭62)1月24日、京都府生まれ。10代からモデルとして活躍し、08年からはバラエティーに出演するなど芸能活動も行う。13年8月にプロレスデビュー。主なタイトルは、KO-D6人タッグ王座、プリンセスタッグ王座(東京女子)など。得意技はケツァル・コアトル、ビッグブーツ。174センチ、53キロ、A型。プラチナムプロダクション所属。