大相撲の元十両栃飛龍(本名・本間幸也、32=春日野)の断髪式が3日、東京・墨田区の部屋で行われ、同期入門の栃ノ心(31=春日野)らがはさみを入れ、止めばさみは師匠の春日野親方(元関脇栃乃和歌)が入れた。

静岡県三島市出身。地元の飛龍高を卒業後、06年春場所で初土俵を踏んだ。今後は実家のある静岡県吉田町で、会社員として第2の人生をスタートさせる予定。

現役最後の場所となった5月の夏場所では、7番相撲で勝ち越しを決めて有終の美を飾った。ここ1年は幕下15枚目以内に残れず、関取の座から遠ざかり「ここが区切りかな」と、土俵から去る決断に至った。「自分の中でやりきった。悔いが残る感じではなく、やりきった」と晴れやかな表情だった。

けがに泣かされても腐らなかった。幕下と三段目を行き来していた入門3年目の稽古中に、高3の時に負傷した首のけがが再発。「後で検査してもらって分かったことだけど、少しずれていたら半身不随になっていたかもと(医者に)言われた」。立ち合いで頭からぶちかます取り口から、突きと押しを重視したスタイルに変更するきっかけとなったが、首の痛みには現役引退まで悩まされた。それでも、初土俵から7年後の13年春場所には新十両昇進。十両在位は計9場所だった。師匠の春日野親方は「去年、一昨年と十両だったからもうちょっと頑張ればと思ったんだけど」と、引退が惜しい様子。女手一つで育てた母の久保田祐子さん(55)は「寂しくなるけど、ここまでよく頑張ったと思う」とねぎらった。

今後は会社員として運送業に携わる予定だが、「飲食店をやってみたい」という夢もある。飛龍高時代は食文化コースで料理の知識を蓄えたため、メニューはちゃんこ鍋にこだわらない。「中華屋さんとかいいですよね。(店名は)『中華飛龍』とか悪くないかな」と、思いついて笑った。相撲の指導者にも興味がある。師匠には「高校に(指導に)行くんだよ」と声を掛けられた。長い力士人生で1番の思い出は新十両昇進。母校などから贈呈された化粧まわし2本は、実家に持って帰る。「諦めないで努力すること。やり続ければ芽が出るとは限らないけど、自分は少しは出た」。約13年間の力士生活に終止符を打ち、胸を張って静岡に戻る。