西前頭4枚目の逸ノ城(26=湊)が横綱白鵬を破り、現役最多タイとなる8個目の金星を挙げた。

関取最重量227キロの体格を生かし、白鵬のお株を奪う盤石の寄り切り。無敗の相手に初黒星をつけ、6勝3敗とした。40歳の十両安美錦、37歳の前頭嘉風と並ぶ8個目の金星を、10歳以上若くして挙げた。全勝は横綱鶴竜ただ1人となった。

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重いのに速かった。逸ノ城は立ち合いで、素早く左上手を取った。右は前まわしをつかみ、主導権を握った。腰を下ろすと、ギアを上げて一気に前へ。もろ差し狙いの白鵬に何もさせなかった。逆転の突き落としを狙い、体を振り回そうとする白鵬の動きを封じて寄り切り。「いろいろ考えるよりも、1つのことだけを考えた。当たって踏み込んで前に出る。それに自信を持ってきた」と胸を張った。

今場所初めて座布団が舞った。現役最多8個目の金星。新入幕から5年足らずで安美錦、嘉風の両ベテランに追いついた。名誉でもあるが同時に「また番付を上げて(横綱と)当たりたい」ときっぱり。大器と見られながら、金星となる平幕にとどまっていることへの歯がゆさをのぞかせた。

「今場所で一番いい相撲だった」と自画自賛の取組には、ご褒美もあった。5勝目までは1本もなかった懸賞が8本ついた。「ようやくって感じですね。5番勝って1つもなかったので、ちょっとショックだった」とニコニコ。使い道は未定だが「ためていきたい」と白星を重ね、自然と懸賞を積み上げるつもりだ。

今年3月の春場所は14勝を挙げながら、全勝優勝した白鵬と対戦しないまま優勝次点に終わった。春場所で対戦してみたかったか問われると、この日の金星で実力を証明したと言わんばかりに「フッ」と、不敵な笑みを浮かべた。前夜は名古屋コーチンの鳥鍋を食べた。力士は、土俵で手をつかないようにと、2本足の鳥を好むが「関係ありません。おいしかったです」と、まったくのマイペース。験担ぎも無縁の逸ノ城は10日目、鶴竜から今場所2つ目の金星も狙っている。【高田文太】