元幕内で西序ノ口5枚目の旭大星(33=大島)が、押し出しで東序ノ口5枚目の藤乃波(22=藤島)を退けて白星発進した。

本場所の土俵に上がるのは途中休場した今年3月の春場所以来。しこ名が呼ばれた際には館内から温かな拍手が起き「まだ俺のこと覚えている人いるんだなと思った」としみじみとした。

土俵下では勝負審判として師匠の大島親方(元関脇旭天鵬)が見つめる中で、復帰戦は立ち合いから全く相手を寄せ付けずの完勝。再出発に向けて確かな1歩を踏み出す白星に「序ノ口でも勝つといいもんですね。うれしい」と喜んだ。

北海道旭川市生まれで、大鵬、北の湖、千代の富士ら幾多の名横綱を輩出した道産子力士。08年初場所で初土俵を踏み、6年掛けて14年名古屋場所で新十両、10年掛けて18年夏場所で新入幕にたどりついた苦労人。幕内デビュー場所では10勝を挙げて敢闘賞を獲得。ここまでの最高位は西前頭8枚目(18年名古屋場所)。

靱帯を負傷した左膝については「ずっと関取の間にごまかしながらやっていた」と言い、今年3月の春場所で途中休場して翌月に手術。術後に上半身のトレーニングから始め、徐々に下半身の強化にも取り組んでいた。

今も万全とは言い難く「今場所も休もうかと思っていました。休むと番付外になっちゃうかなと思って」と出場に踏み切った。「関取に戻ることだけを考えていました」と休場中にも気持ちが切れることはなかった。

同部屋のトップバッターとして土俵に上がり、しっかりと白星で次につないだ。原動力は「相撲は好きだし、良い部屋にいるから」。今後に向けて「1からじゃなく、ゼロからやる気持ちです」と力強く誓った。【平山連】