大相撲の小結琴ノ若(25=佐渡ケ嶽)が、2場所連続での新大関誕生に刺激を受け、大関昇進への意欲を語った。

2日、東京・立川市で行われた夏巡業の朝稽古では、申し合いで計6番取って4勝2敗。関脇若元春、小結阿炎を寄り切るなど、力強い内容の取り口を披露した。7月の名古屋場所は三役として初の2桁白星となる11勝を挙げ、大関とりの起点を築いた。それどころか現在は、小結で4場所連続勝ち越し中。安定感も加味され、次の秋場所(9月10日初日、東京・両国国技館)で初優勝となれば、一気に来場所後の大関昇進の可能性もある。琴ノ若は大関昇進について「なかなかチャレンジできることではない。そこを目指してやっていく」と力説した。

5月の夏場所後に霧島、7月の名古屋場所後には豊昇龍が、立て続けに大関に昇進したことには「もちろん悔しかった」と、本音を打ち明けた。ただ、直後に「人ばかりを追いかけても仕方ない。しっかりと、自分の準備だけをしていこうと考えていた」と続け、人は人と、自分のペースでチャンスをうかがっていた。目標にしてきた三役での2桁白星達成にも「達成したつもりはない。それなら優勝しないといけないし、全勝するまでは達成ではない」と、表情は真剣そのもの。完璧主義者の一端をのぞかせた。

秋場所では、父で師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)と並ぶ新関脇昇進が濃厚だ。「まだ決まったわけではないけど(関脇は)1つの目標だった」。番付運に恵まれず、新三役から勝ち越し続けてきたが関脇に昇進できず、小結据え置きが続いていた。それが名古屋場所で11勝し、15年九州場所の初土俵から、47場所目で父の背中に追いつこうとしている。

それでも、目指しているのは祖父の琴桜(故人)と同じ横綱だ。大関に昇進すれば「琴桜」を襲名予定。「約束したので、それを達成したい。(相撲界に)入ったからには目指そうと思ってやっている」。大関に昇進した際は、しこ名を襲名して構わないと、偉大な祖父と生前に約束した。そして、その約束を果たせる日が、近づいてきた実感も出てきた。

「実は場所前に、ある記事を読んだんです。4場所連続で小結の力士は、4場所目は全員、負け越している、っていう記事です。でも、4場所目も勝ち越しましたね。ちょっと燃えましたよ。『勝ち越してやる』って(笑い)」。新たな道を切り開きながら、オールドファン待望の「琴桜」のしこ名復活を目指す25歳。昭和の時代に「猛牛」と呼ばれ、力強い相撲でファンを沸かせた「琴桜」。負けん気の強さはそのままに、令和に再び誕生しようとしている。【高田文太】