日本相撲協会の八角理事長(60=61代元横綱北勝海)が2日、東京・両国国技館で還暦土俵入りを披露した。4年ぶりに一般公開された、横綱審議委員会の稽古総見後に行い、総見を見学したファンや関係者約4000人を前に、約1分半の堂々とした雲竜型の土俵入りを披露した。

新横綱の時につけた化粧まわしに還暦土俵入りの象徴ともいえる、赤い綱を締めた姿に、館内から「北勝海!」の声も。太刀持ちに君ケ浜親方(元関脇隠岐の海)、露払いに東前頭筆頭の北勝富士を従え、館内にファンを魅了した。

支度部屋で関係者と記念撮影などで過ごした後、報道対応した八角理事長は「ホッとしました。楽しもう、ゆっくりやろうと思ったけど、アッという間でした」と振り返った。

入場の際に現役時代のしこ名がファンから上がったことで「ジーンと来ました。現役の頃を思い出しました」と感慨深げ。2回目のせり上がりの際に、少し足を滑らせ「1回目にうまくいって、その気になって2回目は滑って慌てた」と苦笑いも浮かべた。

師匠として八角部屋を創設して30年の節目でもあった。育てた弟子は105人。「弟子(の元隠岐の海と北勝富士)を従えて、弟子に綱を締めてもらって、親方冥利(みょうり)に尽きます。不祥事もあって『このやろー』と思ったり怒ったこともあったけど、弟子はかわいい」とこの日、土俵入りをも見守った、かつての弟子らへの師弟愛ものぞかせた。

「相撲は伝統文化、神事ごと。邪悪なものを鎮める気持ちで」(同理事長)行った還暦土俵入り。3カ月ほど前に、この日の披露が決まったが、1カ月ほど前に腰痛を発症し、日課の散歩もままならず、体調にだけは留意してこの日を迎えた。

日本相撲協会の停年までは、あと5年。理事長としては「(本場所開催などをコロナ禍から)平常に戻したい」とし、部屋の師匠としては「優勝力士を出したい」と目標を掲げた。

里帰りにもなった8月の北海道巡業では、大関2場所目の霧島と、新大関の豊昇龍に「稽古がまだ足りない。上に上がれるチャンスだから頑張れ」とハッパを掛けた。大所高所から目を光らせる。まだまだ老け込むわけにはいかない。