大相撲秋場所(10日初日、東京・両国国技館)が迫る中でもまだまだ残暑が続く。厳しい暑さの中、親方衆の生活をのぞいてみると、涼を感じる癒やしがあった。その中身を「親方衆の癒やし」と題して全5回にわたって紹介する。最終回は峰崎親方(67=元前頭三杉磯)。

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「アイツ何しているんだと思われているかもしれないけど、全く気にならないよ」と語るのは本心だ。峰崎親方の癒やしは、ドローン(小型無人機)を飛ばすことだ。都内の旧峰崎部屋兼自宅内にある土俵上で実際に飛ばしてもらうと、難易度の高いホバリング(機体を空中で停止飛行する)を見せてくれた。リモコンを巧みに操る姿から、親方であることを一瞬忘れさせるほどだ。

出合いは、部屋持ち親方だった頃に夏合宿で訪れた長野・平谷村だ。9割以上が山林で占められている村を知り合いがドローンで撮影した映像を眺めると、大自然のスケールに驚かされた。「最初はボケ防止」に始めたが、慣れない操縦に戸惑った。体で覚え込むうちにのめり込み、毎年夏合宿で同村に訪れるたびにドローンを飛ばした。弟子を指導する合間に、撮影した映像を眺めるのはつかの間の息抜きだった。

280時間の飛行実績を誇り、民間試験や国家試験に合格するなど技術の習得に余念ない。自宅には数多くのドローンを所有し、その中には数十万円も下らない高額機もあるという。

21年12月には所属する日本相撲協会から依頼されて東京・両国国技館を空撮する企画に協力した。プロ並みの操縦技術を披露し、一躍“ドローン親方”として脚光を浴びた。「ボケ防止で始めたことが気づけば趣味になり、上達するうちに特技になった」と語る言葉には自信があふれていた。人生、何が起こるかわからない。これからもずっと楽しめる癒やしを手にした。【平山連】

【連載】親方衆の癒やし/連載まとめ