3日目の12日に、現役引退と年寄「千田川」の襲名が発表された元前頭の徳勝龍(37=木瀬)が、東京・両国国技館で引退会見に臨んだ。師匠の木瀬親方(元前頭肥後ノ海)も同席する形で行われ「先場所が(幕下で)1勝6敗と、恥ずかしい成績だった。『そろそろかな』と自分の中で決めて、師匠に(引退の意向を)報告した」と、経緯を説明した。「全ての取組を一生懸命やったので、もう悔いはないです」と、晴れやかな表情で話した。今後は木瀬部屋の部屋付き親方として後進の指導に当たるとした。

高知・明徳義塾高-近大から09年初場所で初土俵を踏み、11年九州場所で新十両。13年名古屋場所で新入幕を果たした。体重190キロ前後で突き、押しなどを武器に、幕内在位は32場所に上り自己最高位は西前頭2枚目。幕尻の西前頭17枚目で迎えた2020年初場所で14勝1敗の好成績を収めて初優勝を飾り、00年春場所の貴闘力以来、史上2度目の幕尻Vを達成。この場所で同時に獲得した殊勲賞と敢闘賞が、最初で最後の三賞受賞ともなった。一気に番付を上げた続く20年春場所の西前頭2枚目が自己最高位。この場所は4勝11敗と大きく負け越したが、横綱鶴竜を破って現役生活を通じて唯一の金星を挙げた。

会見では初優勝当時を振り返り「幕内で優勝させてもらった一番はもちろん、前の日の14日目、正代関との相撲が印象深い。それがなければ(大関貴景勝を破って優勝を決めた)千秋楽もない。(正代戦は)連勝していたので、いつも通り、変なことはせず『思い切って行ったらいい』と行ったら勝てた。いまだに(その時の)感覚は覚えている」と、最後の当時大関昇進前の平幕だった正代との1敗対決を、思い出の一番に挙げた。

今年1月の初場所で12年春場所以来、11年ぶりに幕下に陥落。同場所を勝ち越して春場所は十両に戻ったが、夏場所で再び陥落した。最近2場所は2勝5敗、1勝6敗と振るわず、秋場所(東京・両国国技館)は東幕下37枚目に番付を落としていた。初日から自身初となる休場となる中で、引退を決断。生涯戦績は553勝570敗1休。また1人、ベテランが力士人生に別れを告げた。

◆徳勝龍誠(とくしょうりゅう・まこと)本名・青木誠。1986年(昭61)8月22日、奈良市生まれで育ちは橿原市。小4から地元の「けはや相撲クラブ」で相撲を始め、明徳義塾高-近大から木瀬部屋へ。183センチ、190キロ。得意は突き、押し。