日本相撲協会は28日、理事会を開き、職員によるコンプライアンス違反事案の処分を決めた。

職員による労働時間の不適切な管理やパワーハラスメント行為を指摘。協会の事務局を統括する宮田哲次主事に出勤停止1カ月、平山文乃経理・人事室、法務・暴力団等排除推進室及び総務・相撲普及推進室室長に1等級の降格、1人の主任に対しては譴責の処分を科した。

以下、発表の全文

職員によるコンプライアンス違反事案の処分について

公益財団法人日本相撲協会

標記について以下の通りご報告いたします。

第1本日の懲戒処分の内容

本日、当協会は、事務局を統括する宮田哲次主事(以下「宮田主事」といいま

す。)、平山文乃経理・人事室、法務・暴力団等排除推進室及び総務・相撲普及推進室室長(以下「平山室長」といいます。)及び甲施設管理・活用推進室主任(以下「甲主任」といいます。)の職員3名に対し、懲戒処分を決定しました。

3名に対する懲戒処分の内容及び理由(対象事実)は、次のとおりです。

1宮田主事

(1)処分

出勤停止1か月(令和5年9月29日から同年10月28日)

(2)懲戒処分の理由(対象事実)

ア宮田主事は、平成29年以降、<1>時間外労働の不適切な管理、<2>地方場所における不適切な時間管理、<3>振替休日の積算未了、<4>始業時刻前の朝礼の実施、<5>経理・人事室のタイムカード打刻漏れの不適切な処理等、職員の労務管理において不適切な処理が行われていることを看過し、監督を怠った。

イ宮田主事は、令和2年1月、具体的な説明の上での同意を得ることなく、職員Aの基本給を2万円減額した。

ウ宮田主事は、令和4年5月頃から令和5年3月までの間、職員4名に対し、脅迫的な言動を行うなどのパワーハラスメント行為に及んだ。

工宮田主事は、令和に入ってから、採用面接を受けていた職員Bに対して、将来の妊娠・出産に関する計画について説明を求める発言に及んだ。

2平山室長

(1)処分

降格(1等級の降格)

(2)懲戒処分の理由(対象事実)

ア平山室長は、平成29年以降、<1>時間外労働の不適切な管理、<2>地方場所における不適切な時間管理、<3>振替休日の積算未了、<4>始業時刻前の朝礼の実施、<5>経理・人事室のタイムカード打刻漏れの不適切な処理等、職員の労務管理において不適切な処理を継続した。

イ平山室長は、平成30年と、令和4年1月頃から令和5年5月までの間、職員5名に対し、人格を否定するような発言で叱責するなどのパワーハラスメント行為に及んだ。

ウ平山室長は、令和5年6月上旬、権限を濫用して一部職員の共有サーバーヘのアクセス権を制限した。

3甲主任

(1)処分

譴責

(2)懲戒処分の理由(対象事実)

ア甲主任は、令和4年9月から令和5年2月までの間、指示された作業を怠って十全に行わず、怠業により当協会の税務申告手続及び監査法人の決算作業に悪影蓉を与えるとともに他の職員に多大なる業務負担をかけた。

イ甲主任は、令和4年12月から令和5年1月にかけて、SNSへ自らの不誠実な業務対応を示す内容の不適切な投稿を繰り返した。

第2懲戒対象事実のうち不適切な労務管理の詳細1当協会においては、平成29年以降、<1>終業時刻後の時間外労働時間数が45分以上の場合のみ時間外労働の申告を認める、<2>時間外労働を申告する場合には15分単位で申告する、という独自のルールが制定されていました。使用者は、労働者の労働時間を1分単位で管理した上で賃金に反映させる必要がありますので、当該ルールは不適切なものでした。その結果、職員が終業時刻後に時間外労働に及ぶも、その時間が45分に満たない場合や、45分以上の時間外労働に及ぶも15分単位で把握できない場合において、職員に対して賃金が適切に支払われていませんでした。このような取扱いは、平成29年3月の「勤務管理の整備について」という書面により職員に周知された上で運用されていたものです。当協会は、令和5年6月22日から当該運用を改め、以後は1分単位で労働時間を管理しております。

2また、当協会は、一年単位の変形労働時間制を導入した上で、職員が地方場所の業務に従事している場合、事業場外みなし労働時間制を適用し、一日6. 5時間働いたものとみなしてきました。しかしながら、地方場所の業務に関与する職員の労働時間を管理・算定することが困難であるとはいえないことから、このような、みなし労働時間制を

適用することは、不適切な運用でした。

3このほか、当協会においては、<1>振替後の休日に休むことができず、振替休日の積算が未了のまま残っている事例が多数あったこと、<2>朝礼が始業時刻の前に実施されていたこと、<3>経理・人事室の職員に限り、タイムカードの打刻漏れがあった場合は2時間外手当がつかない取扱いとなっていたこと、といった問題も生じていました。

4以上のとおり、当協会における労働時間の管理は不適切であり、その結果、当協会は職員に対して本来支払うべき賃金を支払ってこなかったことが認められました。これを受け、当協会は、不払い解消等の改善措置を速やかに実施することとし、職員に対し、理事長名にて令和5年6月2 2日付け「今後の時間外労働時間の取り扱いについて」と題する書面を周知して是正しました。また、同年7月8日、理事会で、過去3年間に遡った未払額の精算を決定しました。

その後、当協会は、順次、職員に対して説明会を開催するとともに精算金を支払い、同年9月2 5日現在、退職者を含めた職員67名中55名に対し精算を終了しております。なお、精算金の支払いが未了となっている1 2名については、本件処分の結果が出てから対応を決めたいなどとの理由で精算承諾を得られていないことから、本日以降、個別面

談を実施して、承諾を得られた者から順次精算を実行する見込みです。

なお、朝礼については、令和5年6月8日以降、始業時刻以降に実施する旨周知しており、現時点で是正済みです。

地方場所における労働時間の取扱いについては、別途検証を行って改善する予定です。

振替休日についても、可能な限り早期に消化する運用とする方向で進めています。

経理・人事室のタイムカード打刻淵れの処理については、実態を確認して補正の対象とすることとしており、現時点で是正済みです。

第3本件の経緯本件懲戒処分に至った経緯をご説明いたします。

令和5年3月下旬、日本相撲協会職員有志を名乗る匿名の人物からコンプライアンス委員会委員長等宛てに、「日本相撲協会事務所内におけるコンプライアンス案件について」と題する告発文が郵送されました。告発内容の主なものとしては、<1>宮田主事及び

平山室長による職員に対するパワーハラスメント行為、<2>両名主導による時間外労働賃金の不払いなどの不適切な労務管理、<3>宮田主事による出入り業者に対する強要、収賄疑惑といったものです。これを受け、同年3月29日、コンプライアンス委員会で調査を行

うことといたしました。

本調査において、協会職員にアンケートを実施したところ、回答の中に具体的なハラスメント事実等の記載が認められたことから、同年5月19日から同年9月20日までの間、事務局職員57名のヒアリング並びに調査対象者である宮田主事及び平山室長のヒアリング等を

実施しました。なお、この過程で、甲主任について対象事実が発覚しました。

また、ヒアリング結果に基づいて作業班が職員の給与関係資料を調査したところ、先ほどご説明した時間外賃金の不払い等が判明したため、当協会は、本調査の終了を待たずに不払い解消等の改善措置を速やかに実施することとし、是正措置や精算金の支払いを行ったものです。

なお、宮田主事による出入り業者に対する強要、収賄疑惑に関しては、調査した限り、そのような事実は認められませんでした。以上の調査の結果、冒頭でご説明した3名に対する懲戒処分の対象となる事実が認定されたことから、本日開催された理事会で3名に対する懲戒処分を決定したものです。また、平山室長については、退職願が提出されていることから、退職を承認する予定です。

第4今後の対応

当協会は、今回の職員幹部による長期間にわたる不適切な労務管理、職員に対する複数回のパワーハラスメントという事態を深刻に受け止め、事務局体制の改善を含めて、再発防止策を速やかに実施する予定です。

 

▽芝田山広報部長(元横綱大乃国)の話「(主事の男性職員は)どういう形で復帰するかは分からない」