大相撲の関脇で、大関昇進が事実上決まっている琴ノ若(26=佐渡ケ嶽)が、初場所千秋楽から一夜明けた29日、千葉・松戸市の佐渡ケ嶽部屋で会見を行い、初優勝、祖父の琴桜と同じ横綱を目指すことを誓った。相撲一家の3代目に迫る連載「父超えから祖父超えへ 大関琴ノ若誕生」の2回目。

31日、大関昇進が正式決定する琴ノ若(26=佐渡ケ嶽)は、兄弟子を通じて祖父や父の教えを学ぶことも多かった。佐渡ケ嶽部屋は現在45部屋ある中で最長、64年九州場所から60年も幕内力士が在籍し続けている名門。部屋から大関が誕生するのは、11年秋場所後の琴奨菊以来、13年ぶり7人目となる。その琴奨菊から、祖父の元横綱琴桜で先代師匠の「けがは稽古で治せ」の教えを聞いた。

現在は佐渡ケ嶽部屋付きの秀ノ山親方となった元琴奨菊は「幕下の時に、マサカツ(琴ノ若)がどこかを痛めて稽古を休んだことがあった。それで『そんなんじゃダメだよ』と言って、先代の言葉を教えた。そこから目の色が変わった。稽古も休まなくなった」と振り返った。琴ノ若は先代の教えについて「けがしていても稽古しろ、という意味ではなく鍛え直す、けがする前よりも強固な体をつくれという意味だと思う」と解釈。今に生きている。

琴ノ若の父で現師匠(元関脇琴ノ若)に代替わりしてから入門した、元関脇琴勇輝の荒磯親方は「率先して声を出して、稽古もやって部屋をもり立てている。自分が現役の最後の方、番付を落としていた時も『もう1度、若手と一緒に泥だらけになって頑張ろう』と思わせてくれた」と感謝する。琴奨菊は現師匠の付け人を、琴ノ若は琴勇輝の付け人を務めたことがある。祖父、父と受け継がれた伝統の猛稽古は、兄弟子を経由して琴ノ若の血となり、肉となった。【高田文太】