日本相撲協会は9日、都内で臨時理事会を開き、弟子に暴力を振るった元横綱照ノ富士の伊勢ケ浜親方(34)の処分を「委員待遇年寄」から「年寄」への2階級降格、3カ月の報酬10%減額と決めた。師匠は交代せずに継続。全45部屋で最多の力士32人、関取7人を擁する一大勢力は部屋閉鎖などの厳罰は回避した。不適切行為を行った前頭伯乃富士(22)は理事長による厳重注意を受け、当事者2人は騒動を謝罪した。
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「覚悟」の見えない決着となった。日本相撲協会は18年12月に暴力禁止規定、暴力に対する処分基準を決めた。そこでは横綱が暴力を振るった場合は「引退勧告以上」と定め、親方衆について当時から協会トップの八角理事長(元横綱北勝海)は「当然、現役よりも厳しく」と語っていた。だが結果は“大甘”ともいえる処分が、伊勢ケ浜親方に下った。「暴力決別」のうたい文句とはかけ離れ、その本気度は見えなかった。
コンプライアンスが叫ばれる時代。どんなに社員がミスしても「殴る」といった暴力で決着を試みる企業は、他に皆無に等しいだろう。ミスした社員を配置した上司にも責任はある。今回でいえば、悪酔いした前例のある伯乃富士を、大事な後援者との会食の場に同席させた師匠が、判断を誤ったともいえる。同席せざるを得なくても「お前は飲むな」で済んだ話だった。
協会が暴力決別をうたうようになったのは、17年10月の元横綱日馬富士による元前頭貴ノ岩への暴力が原因だった。各種規定を定めた18年12月は、その貴ノ岩が今度は加害者となり、付け人に暴力を働いていた。伊勢ケ浜親方も17年、元日馬富士の暴力を目の前で見たが、歴史は繰り返した。
多くの相撲ファンは、弟子の暴力で部屋が事実上閉鎖となった当時の宮城野親方、元横綱白鵬との処分の一貫性のなさを疑問視している。常習性はなかった、自ら申告した、とはいえ公平さに欠ける。平年寄に降格した貴乃花、白鵬という優勝20度を超える大横綱が協会を去り、厳しい処分を科し過ぎて「元横綱」という協会の宝を失いたくない思惑もあるだろう。全45部屋最多、32人の力士が所属する部屋が閉鎖すれば、影響は計り知れないだろう。ただ伊勢ケ浜親方が1日として変わらず、師匠として弟子を指導できる不条理。これを疑問に思わなくなれば、今が絶頂の大相撲人気は揺らぎかねないだろう。【元相撲担当 高田文太】

